石原兄弟は揃って「討ち死に」も。予測つかぬ衆院選“激戦区”の行方

 

野党一本化の効果が端的に出そうな北海道

北海道には12の小選挙区があり、そのうち3区、4区、9区で共産が候補者を下ろし立憲の応援に回ることになったが、5区、7区、12区では調整がつかず共産が独自候補を立てた。

1区と2区は元々立憲が強いのに対して、3区では過去3回にわたり自民の高木宏寿と立憲の荒井聰=元国家戦略相の獲った獲られたが繰り返されてきた。今回荒井が引退し息子の優が後を継いだものの、地盤の弱さが危ぶまれていたが、2~3万票を持つ共産が応援に回ったことで互角以上の戦いを進めているようで、一本化の効果を計るのに好適な選挙区となる。

同じく共産が引いた9区では、安倍チルドレンの堀井学=元スケート選手と立憲の山岡達丸=元NHK記者が争ってきていて、前回は堀井10万8,747票、山岡8万8,320票、共産2万9,741票だった。単純計算では共産が支持に回った山岡が優位に立つ。

北海道では、前回は12区のうち6区を自民が制した。野党共闘としては今回は一本化効果で自民を2つ減らし8勝4敗にすれば上出来である。

東北では「岸田農政」への期待と不安が交錯

秋田と山形では、いずれも3区あるうちの1区と2区で共産の取下げによる立憲、国民への一本化が実現し、自民との大接戦になっている。秋田1、2区と山形1区では、30~40歳代の野党が60~70歳代の自民に挑戦するという形になっていて、世代的な波が押し寄せているのが1つのポイントだが、マスコミ的にはこの要素がほとんど重視されていない。

また安倍政権が数々の嘘の中でも筆頭と言えるTPP加盟をめぐる嘘八百や、竹中平蔵をイデオローグとした規制緩和、既得権益破壊の名の下の農業破壊、農協弾圧政策の傷跡は深く、それだけに岸田文雄首相が総裁選段階で「新自由主義からの転換」「規制改革推進会議改組」などを口にしたことには農業団体から期待が高まった。が、その後は他の目玉政策と同様、ただの口約束として脇に押しやられようとしている。この辺の束の間の期待と早くもそれが裏切られつつある状況を、農民層はどこまで見抜いて投票するかということである。

秋田2区では、前回は自公の金田勝年が7万4,835票に対して「希望」から出た緑川貴士が7万3,163票の僅か1,672票差。その時には1万3,642票を取っていた共産が立憲の緑川を押せばたちまち優勢になるはずだが、その通りになるかどうか。

福島の5選挙区では全てで一本化が達成された。特に海に面した1区と5区では、放射能汚染水の海洋放出を漁民らの反対を蹴散らして強行する政府方針を岸田が踏襲しようとしていることへの反発がどう出るか。

石原伸晃の落選可能性まで囁かれる東京激戦

東京は25の選挙区のうち18で立憲・共産・れいわが一本化し、自公vs野党共闘の図式が際立つかと思いきや、全国化を狙う維新が17人を立てたのでまさに三つ巴の戦いとなった。今のところ、自民の12人が優勢もしくはリードしているのに対し、立憲で優勢なのは7区の長妻昭、9区の山岸一生、18区の菅直人の3人程度にすぎず、残りの10の区では混戦が続き予測がつかない。

注目は8区で、れいわの山本太郎の乱入で立憲と共産の一本化協議が壊れそうになったが、結局山本が引いて、石原伸晃と立憲の吉田晴美の事実上の一騎討ちとなった。前回、吉田は7万6,283票で2万3,600票差で敗れたが、この時はそれ以外の野党系として「希望」が4万1,175票、共産が2万2,399票、無所属の円より子が1万1,997票を得て完全にバラけていたので、一本化の効果を見込めるのではないか。小なりといえども自民党の1派閥を率いる石原が落ちると衝撃は大きい。なお維新も立てているが、撹乱要因となるほどの力を持ちそうにない。

山本太郎はれいわの比例第1位に座ったので、たぶん議席を得ることが出来るだろう。

ちなみに東京3区の石原の実弟=宏高も毎回、立憲の松原仁と激しい競い合いを演じてきたが、今回、野党の一本化が成らず共産も立っているので(それは当然で、いくら共産が物わかりが良くても松原のド右翼路線を担ぐわけにはいかない)その分有利かと思いきや、かなり苦しい戦いになっていて、場合によると石原兄弟揃って討死もあり得る。

静岡では5区が話題で、民主党政権の大臣や党幹事長まで経験しながら今は自民党二階派の客員会員となった変節漢=細野豪志がこのまま優勢に戦い切ることができるのかどうか。対抗するのは自民党公認の岸田派の吉川赳と立憲の新人=小野範和。

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