史上初めて「野党共闘」が現実のものとなり、多くの選挙区で野党候補の一本化が実現した第49回衆議院議員総選挙。31日の投開票を控え全国で激しい戦いが繰り広げられていますが、識者はその行方をどのように読むのでしょうか。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では著者でジャーナリストの高野孟さんが、当選挙の見所を挙げその各々について詳細に解説。さらに「次世代のリーダー」の具体的な名を記しています。
※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2021年10月25日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:高野孟(たかの・はじめ)
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。
野党共闘の効果で自公は辛うじて過半数維持程度か?/しかし接戦区が多くまだまだ分からない最終盤
公示直前になって立憲民主党と共産党を軸とする5野党共闘態勢がかなり進展したため、289の小選挙区のうち74%に当たる213区で野党の候補者一本化が実現、そのうち142区が与野党2極対決、71区が自公・5野党・維新などの三つ巴という、これまでにない総選挙の様相となった。
バラ付きが大きすぎる各紙誌の予測
そのため、毎日新聞10月21日付の分析では、2極対決の142区のうち33区、三つ巴の71区のうち24区、その他を含めて合計で289小選挙区の2割に当たる63区で「接戦」が演じられている。結果として同紙の20日段階の「推定当選者数」も、
- 自民 224~284
- 公明 26~30
〔与党計〕 230~314 - 立憲 88~146
- 共産 16~ 18
- 国民 5~ 9
- 社民 1
- れいわ 1~ 2
〔野党共闘計〕111~176 - 維新 30~ 35
- その他 4~ 14
と幅が大きすぎて、余り参考にならない。読売新聞10月21日付や毎日新聞22日付は全選挙区について情勢を短評しているが、これでも多くは「互角」「接戦」「横一線」「激しく競り合う」「デッドヒート」「しのぎ削る」といった表現が繰り返されていて、大きな流れを判断する材料とはなりにくい。
今週の週刊誌も、野党共闘の進展を計算に入れて先週までの各誌よりも与党に厳しい予測を出しているが、それでもバラ付きが大きい。「週刊現代」10月23・30日合併号では、4人のプロ筋の予測とそれらを総合調整した評価を出しているけれども、その4人の間でも自民党の獲得議席予測は40議席も差があるという有様である。
有馬晴海 松田馨 C氏 D氏 総合
- 自民 256 247 213 216 225
- 公明 31 30 32 32 31
〔与党計〕 287 277 245 248 256 - 立憲 118 128 151 151 144
- 共産 17 17 17 18 18
- 国民 10 10 9 10 10
- 社民 1 1 1 1 1
- れいわ 1 1 0 1 1
〔野党共闘計〕 147 157 178 181 174 - 維新 26 27 36 31 30
- その他 5 4 6 5 5
C氏は大手紙政治部デスク、D氏はテレビ局政治部デスクである。
いずれにしても、自民党が最悪の場合、現有に比べて44議席以上を減らして単独過半数233を切る可能性さえあるけれども、その場合も公明党の30議席程度があるので、自公で過半数割れを起こすことはありそうにないというのが大方の見るところである。とすると、野党第1党としての立憲は、
- 今回は150前後、出来れば155=3分の1を超える議席を占めて存在感を示し
- それが達成できなくとも、せめて共産などと合わせた野党共闘勢力として3分の1以上を占め与野党伯仲に近い状態を作り出して、自民党のやりたい放題に歯止めをかけ
- 攻勢を保って来年参院選に臨み、自公に123の過半数を割らせて衆参のネジレ状態を現出し
- 次の総選挙で本当の政権交代を果たす
――という段取りを目指すのだろう。
以下、選挙戦の見所をいくつか挙げておこう。