派生商品で客を飽きさせない~ブランドエクステンション
2019年に社長に就任した太田栄二郎(62)には確固たる商品戦略がある。
「他社にもブランドはあるが、森永製菓は120年の歴史があってブランドも多い。歴史でつくってきたブランドは大事にしたいですね」(太田)
新商品の開発はもちろんだが、ロングセラーを数多く持つ強みを活かし、定番商品を進化させていくというのだ。
「ブランドエクステンションと社内では呼んでいますが、ブランドを磨いて、『ハイチュウ』だと『ハイチュウプレミア』を作ったり、『チョコボール』だと『大人のチョコボール』を作ったり」(太田)
ブランドエクステンションとは、既存のブランドを使って新たな商品に進化・拡張させていく戦略。例えば、1975年発売の「ハイチュウ」は、噛めるキャンディというこれまでにない食感で人気になった。これをブランドエクステンションで進化させる。
「ハイチュウプレミアム」は素材と食感をよりグレードアップした大人向けの「ハイチュウ」。大人向けとなるとアピールポイントも変わってくる。「瀬戸内産のレモンパウダーを使い、本格的なレモンの味わいに変えたことをより強く押し出す」といった議論を積み重ねて、ブランドを進化させているのだ。
一方の「チョコボール」。ピーナッツにサクサクの衣、その上にチョコがかかった新しいお菓子は子どもたちの心をつかんだ。それがコロナ禍の去年、新商品「チョコボールのなかみ」になった。誕生のきっかけは工場の従業員たちだった。
「チョコをかける前の段階のものに塩をかけて食べていました。『おいしいよね』『これを商品にしたらいいよね』と」(小山工場・島田昌昭)
これを聞いた本社は商品化を決定。発売すると、コロナ禍での家飲みのおつまみにピッタリだと、たちまち人気となった。
「『パッケージを見た時はうれしかったです。我が子が旅立って行ったみたいな」(島田)
「チョコボール」といえば、金や銀のエンゼルマークを集めるともらえる「おもちゃのカンヅメ」。これを欲しさに買った人も多いはず。最新の「おもちゃのカンヅメ」はマスコットキャラクター「キョロちゃん」の形。見た目だけでなく動くのだ。ちなみに中身のおもちゃは「絶対に秘密です。当たった人だけ中身を知ることができるのは発売当初から。社長も知らない」と言う。(菓子マーケティング部・武田優太)
売上高約2,000億円、社員数2,825人。森永製菓はロングセラーを武器にいつの時代も挑戦を続ける。
「時代時代のお客さまに選ばれ続けるような仕掛けをする。それを積み重ねてここまできたので、ブランドは絶やさない」(太田)











