コロナ防疫で苦悩が続く北朝鮮で「臨時紙幣発行」の“末期的状況”

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今年は昨年のような台風被害もなく収穫の喜びに沸く秋を迎えるかと思われた北朝鮮ですが、不作との観測もあるようです。原因の一つと考えられるのが田植え期の肥料不足。コロナ防疫のための国境閉鎖による物資不足はさまざまなところに影響が出て、紙幣印刷のための用紙やインクも不足しているようです。メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』著者で北朝鮮研究の第一人者である宮塚利雄さんは、臨時の金券「トンピョ」発行の噂についても触れ、深刻度を増す北朝鮮の経済難の現状を伝えています。

※本記事は有料メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』2021年11月5日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:宮塚利雄みやつか・としお
宮塚コリア研究所代表。韓国・慶熙大学校碩士課程、檀国大学校博士課程修了。山梨学院大学教授(1992~2015年)。主な著書に『北朝鮮・驚愕の教科書』(宮塚寿美子と共著)、『北朝鮮観光』「がんばるぞ!北朝鮮』『アリランの誕生』『日本焼肉物語』『パチンコ学講座』、そのほか翻訳本多数あり。

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金券「トンピョ」とは?

例年ならこの時期になると、そろそろ各地の協同農場から豊作を祝う「決算分配」の便りが聞こえてくるのだが、今年は田植え期の肥料不足や資材不足が重なって不作が予想されたものの、昨年のように水害の被害は少なかったので、収穫量は昨年を上回るのではないかと言われている。

しかし、金正恩(キム・ジョンウン)総書記は、医療品不足で腸チフスなどの伝染病の蔓延、食糧難から「薄水の上を歩く思いだ」と吐露しつつ、「米一粒残さず収穫せよ。飯を食うものは全員、農村支援に行け」と軍や国民の動員を命じたとのこと。

『デイリーNK』(11月2日)の「北朝鮮軍が『飢えた障害者』を射殺…『それでも人民の軍隊か』国民激怒」という記事で、「北朝鮮ではこの時期、協同農場の穀物供出を巡り、農民と軍、政府が毎年のように、三つ巴の争いを繰り広げている。特に今年はコロナ鎖国による肥料不足、相次ぐ自然災害で例年にまして作況が悪く、数少ない収穫物の取り合いになっている」と、前者とは異なる不作説を報じているが、国境閉鎖で経済難が深刻さを増していることは事実である。

さらに驚くべきは、新型コロナウイルス対応で国境閉鎖を続けてきた北朝鮮が、紙幣用紙や特殊インクの輸入が滞り、苦肉の策として、国産用紙で臨時紙幣を発行するまで追い込まれていることがわかった。これは北朝鮮の財政難が深刻化し、国家機関や国営企業の資金繰りが悪化、物資購入代金や給与の支払いが滞る事態になっており、紙幣の印刷もできなくなったということだ。

北朝鮮政府は「銭票(トンピョ)」という金券を発行して代替させようというものである。臨時の朝鮮中央銀行金券が発行されたのは、8月頃と言われ、韓国のメディアが、額面5000ウォンのトンピョの写真を9月初旬に報じて明らかになったが、北朝鮮国内では、このトンピョが発行されたことを知らない者も多く、平壌に住む外国人も「知らないし、見たこともない」とのこと。

このトンピョについては、私も中国の朝鮮族に入手を依頼しているので入手次第、このトンピョについて報告したい。いずれにせよ、北朝鮮の経済状況が、それほどまでに悪化していることを証左するものである。(宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄)

※本記事は有料メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』2021年11月10日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。各月550円です。

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