東芝「3分割」の論評に違和感。死に体の日本企業には“ハゲタカ”が必要だ

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11月12日、経営再建のために会社の3分割を発表した東芝。日本国内では「『もの言う株主』に屈した」とする論評が多く、日本特有の「間違った会社運営」を肯定していると「時代遅れ」を指摘するのは、メルマガ『週刊 Life is beautiful』著者で、「Windows95を設計した日本人」として知られる世界的エンジニアの中島聡さんです。中島さんは、自身が経験した「昭和な会社」の非生産的な子会社化の構図を変えて浄化するには、「ハゲタカ・ファンド」と呼ばれる「もの言う株主」は歓迎すべき存在だと伝えています。

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

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日本社会を浄化する「もの言う株主」

東芝が3分割を決めた件については、色々な記事が書かれていますが、多くの記者や評論家が「経営陣が『もの言う株主』に屈した」と評している点が、興味深い点です。

典型的なのが日経の「迷走・東芝の教訓、アクティビストの処方箋」という記事で

「今の東芝は完全に司令塔が不在だ」。東芝の状況に詳しい関係者はこう語る。社外取締役らで構成する「ストラテジックレビューコミッティー(戦略委員会)」。社外取締役にはファンド出身者も含まれ、「アクティビストの多様な要求が届いている」(関係者)という。目先の配当から、事業の切り売りまで株主によっても視点は異なる。

 

一連の不祥事を経て、綱川智社長兼最高経営責任者(CEO)は「株主の声に真摯に耳を傾ける」と語った。戦略委員会とは別に、経営陣も長期的な企業価値の向上策などを議論をしているようだが、そのまま通る地合いではない。

 

これまでの経緯を踏まえれば、優位なのは明らかに株主であり、エリオットのようなアクティビストの意見が通りやすい状況にある。「売れる事業の切り売りを迫られ、売れないものだけが残る。そんな最悪の事態にもなりかねない」。先の関係者はこんな懸念を口にした。(10月18日付 日本経済新聞)

と、経営陣と株主が対立する立場にあることを前提に、東芝は「経営陣がだらしないから株主の言うことを聞かなければならない」と表現しています。しかし、これは、取締役の大半が経営陣で構成されているようなコーポレート・ガバナンスが効かない状態で会社経営を続けて来た、日本特有の「間違った会社運営」を肯定する発言でしかないのです。

会社の所有者は株主であり、経営陣は株主に雇われた人々でしかないことを考えれば、経営陣の役割は株主の利益を最大化することにあり、「会社分割」や「売却」が株主の利益になるのであれば、それを実行するのが経営陣の役割なのです。

東芝の経営陣は、ウェスティングハウスの買収とリスクの高い原発事業への債務補償、不正会計、「虎の子」の東芝メディカルの売却など、数多くの間違いを繰り返して来ました。その結果、株価は低迷し、会社が本来持っている企業価値よりもかなり安い価格で株が取引されるようになってしまいました。

米国では、この手の会社の株を大量に買い付け、経営陣を入れ替え、不採算部門をリストラした上で、会社を分割・売却した上で、利益を得ようとするファンドが複数あります。

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