全国のグルメを仕入れろ~「ノー残業」「ノー会議」
マグロの水揚げ量では日本有数の宮城・塩釜市にやってきたのは、ジャパネットのバイヤー・勝野友介だ。
ジャパネットが扱うのはこれまで家電中心だったが、旭人は食品への参入を決めていた。そこで去年、食品バイヤー歴10年以上の勝野を中途採用。勝野は日本各地を飛び回り、「これは」という食材を発掘している。
「全国のいい物を探すっていうことで、新しい企画をどんどん考えています」(勝野)
こうして生まれた新たな通販商品が「グルメ定期便~全品お肉と海鮮コース」。近江牛や下関のフグなど日本各地の高級食材を、毎月定額で届けるというもの。塩釜のマグロは9月のお届けになった。
他にも旭人は、富士山の天然水が毎月届くウォーターサーバーのレンタル事業を開始。旅行業の免許まで取得し、豪華客船をチャーターしたオリジナルのクルーズ旅行を販売するなど、商品の幅を広げている。
一方、職場でも旭人の改革は始まっていた。
勤務時間中に大量の駄菓子が運ばれてきた。月に1回、各部署で行う「お菓子会」だ。準備するのは各部署の管理職。お菓子を振舞うことでコミュニケーションを深めるのが目的だ。
また、旭人は週のうち3日をノー残業デーにした。その日は全員、6時半までに退社しなければならない。他にも毎日、会議禁止の時間帯を設定し、年間の休日も10日増やした。社員のひとりは「減った時間の中でどうするか、癖がついている。ぎゅっと濃縮してやっている感覚です」と語っている。
2代目の巨大プロジェクト~700億円投資
旭人はある巨大プロジェクトを進めていた。舞台は長崎の中心地にある広大な工場跡地。ここに、サッカー専用スタジアムを軸とした複合施設を建設するという。
「スタジアムと、そのまわりにホテル、商業施設、オフィス、アリーナという5つの施設をつくります」(旭人)
ジャパネットはプロのサッカーチーム「V・ファーレン長崎」とバスケットボールチーム「長崎ヴェルカ」を持っている。スポーツで全国から観光客を集め、長崎を活性化しようというのだ。
2024年開業予定のこの「長崎スタジアムシティ」について、スタジオで村上龍から「『採算がとれるのか』という声もあるのではないか」と問われた旭人は、次のように答えている。
「常識で考えると、採算はとれないと思われているかもしれません。今回700~750億円の投資をすることになります。でもジャパネットはいろいろな改善をやってきた会社なので、我々がやりきれば採算は合うのではないか。地域創生とスポーツはすごく相性がいいので、地域創生という日本の大きな課題に挑む覚悟です」
~村上龍の編集後記~
九州には「のぼせ者」という言葉がある。お調子者とか、目立ちたがりとか、出過ぎた奴とか、あまりポジティブではないが、わたしは好きだ。というのは「のぼせ者」が何かを変える力を持つからだ。髙田旭人氏が狙うスタジアムを中心とした街造りというのは、「のぼせ者」の発想だ。失敗するかも知れないが、とにかくやってみる。綿密な計画を練るが、最後は「何とかなるやろ」という破天荒な楽観主義がある。父親もそうやってきた。「のぼせ者」の系譜なのだ。
<出演者略歴>
髙田旭人(たかた・あきと)1979年、長崎県生まれ。2002年、東京大学卒業後、野村證券入社。2004年、ジャパネットたかた社長室長に着任。2015年、社長就任。
(2021年10月21日にテレビ東京系列で放送した「カンブリア宮殿」を基に構成)