女性から男性へ、男性から女性へ。2度の性転換をした本人が語る「あの時、スカートをはかない選択ができたなら」

 

「女性に戻ったわけではない」の真意

ユズシカさんはその後、39歳で男性器を切除。以降、役所や関係各所へ出向き、およそ3年かけて性別変更の手続きをとり、再び女性になりました。

しかし、「女性に戻った」と言われると「釈然としない気持ちになる」のだそう。

「女性に戻ったんじゃない。振り返れば、私は長い時間をかけて『中性の自分』を求めていたのだと思うんです。現在も無理にフェミニンなファッションは着ない。髪はショートカットのまま。勤務する病院でも、わざわざ女性になりましたなんて言ってないです。性別は、どちらともとれる。そしてそれが、今の自分にはとても自然なんです」

戸籍上は女性でも、精神的には「中性」として穏やかな状態で日々を過ごせているというユズシカさん。「往復性転換」をした人生に、後悔はないのでしょうか。

「とにかく、お金がかかる人生でしたね。けれども、その瞬間その瞬間を必死で生き、自分で決断してきました。後悔はありません。ただ、中学・高校の制服が『女子だからスカート』ではなく、ズボンを選べていたならば、退学はしなかったかもしれない。そして、ちゃんと卒業して、別の人生があったのかも。それは、ちょっと思う日がありますね」

▲「2度の性転換に後悔はない」と強く語る

▲「2度の性転換に後悔はない」と強く語る

女と男。およそ50年にわたり、性別のあいだで揺れ動き続けたユズシカさんの人生。その50年の間に日本では「男なら」「女なら」といった性別への先入観や偏見、差別を覆すためのさまざまな取り組みが行われてきました。

しかし、学校の制服をはじめ慣習は強固に根付き、変革できぬ様式もまだまだたくさん残っているのが現実。「中性」という境地に生きやすさを感じたユズシカさん。そこに学びがあると感じた取材でした。

吉村智樹(放送作家・ライター )

京都在住の放送作家兼フリーライター。街歩きと路上観察をライフワークとし、街で撮ったヘンな看板などを集めた関西版VOW三部作(宝島社)を上梓。新刊は『恐怖電視台』(竹書房)『ジワジワ来る関西』(扶桑社)。テレビは『LIFE夢のカタチ』(朝日放送)『京都浪漫』(KB京都/BS11)『おとなの秘密基地』(テレビ愛知)に参加。まぐまぐにて「まぬけもの中毒」というメールマガジンをほぼ日刊で発行している(購読無料)。

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