「多様なセクシュアリティのあり方を認めあう」。それは令和に生きる私たちの課題です。しかし、つい「男はこうあるべきだ」「あの人、女っぽくないよね」など旧態依然とした性別観に縛られた発言をしてしまうケース、あなたにはないですか。なかなか古い概念を消し去れない、それが実情です。
そんななか、幼い頃から性同一障害に苦悩し、女性から男性へ、男性から女性へ、2度の性転換を実行した人物にお話をうかがうことができました。女と男のグラデーションのなかで生きた彼女の発言は、性別について考えるための、多くの示唆を含んでいたのです。
「自分は本当に女の子なのか?」と疑いをいだいた幼少期
「往復性転換」の経験があるユズシカさん(51)。彼女は訪問介護をする看護師です。SNSで性同一障害と2度の性転換を打ち明け、性別不合に悩む人たちの力になっています。

▲名古屋で看護師の仕事をするユズシカさん。2度の性転換を果たした
ユズシカさんは名古屋にお住まい。十代は奈良で暮らし、二十代は大阪で働きました。その後は北陸~東海と、居住地を転々としています。
自分の性別が女である。ユズシカさんがそこに「違和感をおぼえた」のが幼少期。
「女の子として扱われるたびに、しっくりこない感じがありました。なので、物心がついたときから、自分のことを僕と呼んでいました」

▲幼少期のユズシカさん。幼い頃から女の子として扱われることに抵抗感があった
自分は本当に女の子なのか? ちぐはぐな不一致感にさいなまれた子ども時代。しかし、なぜ自分の性別が心地よくないのか、幼稚園児だったユズシカさんには、まだ理解ができずにいました。
「母親が買ってくるかわいい服を着たり、お人形を与えられたりするのがつらかった。とにかく、『女の子はかわいいものが好きだ』と決めつけられるのがイヤだったんです。散髪屋さんへ行っても、自分が納得できる髪型にしてもらえず、憂鬱でした。でも、イヤだといってはいけない気がして、我慢していたんです」