これに続く、「ドイツ国防軍の見通しも慎重であったため、ヒトラーは一旦侵攻を見送った」というくだりも、これまでプーチン大統領を支持してきたロシアの退役将校団によるプーチン批判と重ねると、今回は欧米諸国との首脳会談などによって兵を引くことになったとしても、決して油断することはできないことを教えてくれます。
KGB(国家保安委員会)の将校として東ドイツ駐在歴があり、ドイツ語に堪能なプーチン大統領は、おそらく第2次大戦前夜のドイツの行動を熟知しており、同様な行動をとることによって生まれる欧米諸国の危機感を逆手にとって、NATOの東方拡大を阻止するカードにしようとしているのではないか、と思われます。
チェコスロバキア解体に出たドイツに対して、英国のチェンバレン首相は最大級の非難を浴びせたものの、阻止する動きに出ることはなく、ドイツのなすがままになってしまいました。
今回、NATO諸国もまたズデーデン併合の教訓に学んでいるはずですから、軍事力によって現状を変更しようとするロシアを阻止するために、思い切った経済制裁などで不退転の覚悟を示すべきだと思います。日本もまた、中国の軍事力による現状変更を阻止するためにも、ウクライナ情勢への積極的関与は避けられません。(小川和久)
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