悠仁さま報道に見る宮内庁「言論封殺」と権力に迎合する記者クラブの害悪

2022.03.03
 

第二次世界大戦時、日本の報道機関が、政府と報道機関は一体化したのと対照的に、英国では、ウィンストン・チャーチル首相(当時)がBBCを接収して完全な国家の宣伝機関にしようとしたが、BBCが激しく抵抗したため、実現できなかった。もちろん、BBCには、反ナチズムの宣伝戦の「先兵」の役割を担う部分があったが、同時に英国や同盟国にとって不利なニュースであっても事実は事実として伝え、放送の客観性を守る姿勢を貫いていた。

戦時中、BBCのラジオ放送は欧州で幅広く聴かれ、高い支持を得ていたが、それは「事実を客観的に伝える」という姿勢が、信頼を得たからであった。そして、その報道姿勢は結果的に、英国を「宣伝戦」での勝利に導くことになったのだ。

現在の英国のメディアはどうだろうか。英紙「ガーディアン」が、米中央情報局(CIA)のエドワード・スノーデン元職員から内部資料の提供をうけ、米国家安全保障局(NSA)と英政府通信本部(GCHQ)による通信傍受の実態を特報した件を取り上げたい。

スノーデン氏からガーディアン紙が入手して報道した情報は、世界中に衝撃を与えるものであった。例えば、「英国政府が、2009年にロンドンで開かれたG20で各国代表の電話内容を盗聴していたこと、メールやパソコンの使用情報も傍受し分析していたこと」である。これは英国でG8=主要国首脳会議が開催される直前に暴露されたため、ディビッド・キャメロン保守党政権は面目丸つぶれとなった。

また、ガーディアン紙は、スノーデン氏から入手した文書から、米国政府が英国の通信傍受機関「GCHQ」に対して、3年間で少なくとも150億円の資金を秘密裏に提供していたことを暴露した。そして、ガーディアン紙は、米国が資金提供によって、英国の情報収集プログラムを利用し、一方で、英国が米国内でスパイ活動を行い、その情報を米国に提供している可能性を指摘した。

これらの報道に対して、キャメロン首相は強硬手段に出た。英国には、日本の特定情報保護法に相当する「公務秘密法」がある。スパイ防止・スパイ活動、防衛、国際関係、犯罪、政府による通信傍受の情報を秘密の対象とし、公務員などによる漏出に罰則の規定がある法律だ。この法律に基づき、ガーディアン紙の報道を止めようとしたのだ。

英政府高官が、ガーディアン紙のアラン・ラスブリッジャー編集長に面会を求め、情報監視活動に関するすべての資料を廃棄するか、引き渡すよう要求した。編集長はこれを拒否したが、GCHQの専門家2人が来て、「楽しんだだろう」「これ以上記事にする必要はない」と言いながら、関連資料を含むハードディスクを次々と破壊したのである。

だが、ガーディアン紙は屈しなかった。ラスブリッシャー編集長は、文書データのコピーが英国外にもあるとし、「我々は辛抱強くスノーデン文書の報道を続けていく。ロンドンでやらないだけだ」と強調した。また、編集長は、英政府の行為を「デジタル時代を理解しない暴挙」と断じた。また、ガーディアン紙が国際的なジャーナリストのネットワークの中で行動しているとし、今後、英政府の管轄外で暴露記事を発表し続けることが可能だと示唆したのである。

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