悠仁さま報道に見る宮内庁「言論封殺」と権力に迎合する記者クラブの害悪

2022.03.03
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現在も過熱気味の報道がなされている、秋篠宮悠仁さまの高校進学を巡る問題。しかしこの件についての宮内庁の対応には大きな問題があると言わざるを得ないようです。今回、同庁の週刊誌報道に対する見解を「名誉棄損」であり「言論封殺」とするのは、立命館大学教授で政治学者の上久保誠人さん。上久保さんはそう判断せざるを得ない理由を述べるとともに、その後の宮内庁の発表を何の論評もなく伝えた大手メディアを厳しく批判。さらに彼ら大手メディアが会員となっている、デメリットしか見当たらない「記者クラブ」の廃止を強く訴えています。

プロフィール:上久保誠人(かみくぼ・まさと)
立命館大学政策科学部教授。1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。主な業績は、『逆説の地政学』(晃洋書房)。

言論封殺と「記者クラブ」廃止論

秋篠宮悠仁親王殿下が、筑波大附属高校に「提携校進学制度」で進学することが発表された。殿下の進学については賛否両論があるが、私は、殿下自身が望まれる学校への進学ならば、結構なことだと思う。

一般受験ではなかったことを問題視する人がいる。だが、皇族が庶民と一緒に受験することのほうが問題だ。また、学習院に進んで「帝王学」を学ぶべきという意見もある。だが、そもそも「帝王学」の定義はなにか、明快に説明してくれる人はいない。

戦後の「象徴天皇」は学者でもある。特に、昭和天皇、上皇陛下は「生物学者」だ。それは、学問、特に生物そのものについての深く、広い見識を持つことも「帝王学」の一部をなしているということではないだろうか。

噂されるように、悠仁親王殿下が最高学府の東京大学に進み、最先端の「生物学」を研究されるならば、それは象徴天皇の帝王学として、最高のものとなるのかもしれない。だから私は、殿下が高校・大学と自分が学びたいことを学ばれるならば、特になにもいうことはないと思う。

一方、この件に関する宮内庁の姿勢については、厳しく批判させてもらいたい。言論の自由に対する圧力ともとれる言動を繰り返したからだ。私は、言論の自由、思想信条の自由、学問の自由だけに殉じる学者だ。皇室について批判をするつもりはないが、言論の自由を侵す動きについては黙っているわけにはいかない。

宮内庁の発表前に、「悠仁親王殿下が提携校進学制度で筑波大附属高校に進学」と報じた週刊誌などのメディアに対し、宮内庁は「受験期を迎えている未成年者の進学のことを、臆測に基づいて毎週のように報道するのは、メディアの姿勢としていかがなものか」とする見解を公表した。だが、結果として週刊誌などの報道は「憶測」ではなく「事実」だった。

週刊誌などは、確かに売り上げを伸ばすために、事実でないことや憶測が記事に混じることはあるが、基本的には地道で綿密な取材活動を行っている。「憶測」で記事を書いているというのは、週刊誌などに対する「誹謗中傷」であり、「名誉棄損」である。宮内庁は、週刊誌などに対して謝罪すべきである。

また、皇室を盾にする形でメディアに対して報道を控えろというのは、権力で自由な言論を抑える「言論封殺」に他ならない。宮内庁は、天皇陛下の誕生日記者会見でのお言葉「人々が自分の意見や考えを自由に表現できる権利は、憲法が保障する基本的人権として、誰もが尊重すべきものですし、人々が自由で多様な意見を述べる社会をつくっていくことは大切なことと思います」を重く受け止め、二度と言論封殺を行うべきではない。

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