悠仁さま報道に見る宮内庁「言論封殺」と権力に迎合する記者クラブの害悪

2022.03.03
 

宮内庁とともに問題なのは、「記者クラブ」の会員である新聞・テレビなど大手メディアではないだろうか。筑波大付属高校の入学試験の日、悠仁親王殿下が入試会場に入る姿を大手メディアが報道した。

宮内庁は悠仁親王殿下の進学についての報道を控えろとメディアに言っていたはずだ。だから、メディアが偶然殿下をみつけたというわけではない。宮内庁が、会場に入る殿下の姿を報じるように伝えていたからだと容易に想像できる。

その上、奇妙なことは、大手メディアが最初、殿下が筑波大付属高を受験したように報じ、その後、「提携校進学制度での筑波大付属高進学」という宮内庁の発表を何の論評もなくそのまま伝えたことだ。

宮内庁は、悠仁親王殿下が受験して実力で合格したように見せようとした。だが、世論の反応があまりに悪いので、「提携校進学制度」での入学を公開する方針に切り替えたのだと思われる。そして、大手メディアは、宮内庁の意向に沿って報じていたということだろう。

大手メディアが所属している「記者クラブ」とは、議会、省庁・警察、大企業などに出入りのメディアが設けたクラブである。クラブの会員の記者たちは、相手機関が提供した部屋に常駐して取材することができる。

「記者クラブ」の問題は、NHK、新聞協会会員社、日本民間放送連盟会員社の社員記者しかクラブのメンバーになれない閉鎖性だ。そのため、週刊誌、フリーランスのジャーナリスト、外国メディアなどメンバー外の取材活動が困難となっているのだ。

一方、記者クラブは情報源を相手機関に頼っている。その結果、相手機関に従順になり、利用されてしまうことになる。例えば、安倍晋三政権は、官邸記者クラブを抑えてメディアをコントロールした。官邸に集まるありとあらゆる情報を管理することで、強大な権力を掌握し、憲政史上最長の長期政権を築いたのだ。

重要なことは、この閉鎖的な会員制度は、第二次世界大戦時の国家総動員体制を起源としていることだ。1941年の「総動員法」に基づき「新聞事業令」が制定された。当時848紙あった日刊新聞は、54紙に統合された。全国紙は、朝日、毎日、読売、日経などに統合されるとともに、地方紙は「一県一紙主義」が進められた。

そして、42年に「日本新聞会」が発足した。その会員である新聞社・日本放送協会の社員記者だけが政府機関の「記者クラブ」に所属できるという記者登録制度が誕生した。それが、戦時中に政府と一体化し、「ミッドウェー海戦で連合艦隊大勝利!」というような「大本営発表」を流して、国民の戦争熱を煽ったのだ。

「記者クラブ」という制度が、言論統制を試みる権力側にメディアが従うものとなっているのは、その成り立ちを振り返れば当然なことなのである。「記者クラブ」の問題をより多角的に考察するために、記者クラブのような組織がない、英国の報道機関を事例として提示する。BBC(英国放送協会)は、国民が支払う受信料で成り立つ公共放送という点で、NHKと類似した報道機関である。だが、権力との関係性は、歴史的に見て全く異なっている。

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