プーチン最大の誤算。“民度の高い”ウクライナ人の前に散る大国ロシア

2022.03.18
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現在、ロシアとウクライナの停戦交渉が続いている。ロシアは、ウクライナに対して事実上の「無条件降伏」と「非武装中立」を求め続けて、妥協するつもりがない。しかし、ウクライナには、絶対に受け入れられない。ウクライナを支持する国際社会も「力による現状変更」は絶対に容認できない。停戦交渉をまとめるのは、極めて困難だ。

泥沼の戦闘が延々と続くと、ロシアに対する経済制裁が次第に効き始めてくる。ロシア経済が悪化すると、国民の不満が爆発する懸念がある。しかし、ウクライナから撤退すれば、プーチン大統領がアピールしてきた「大国ロシア」が幻想であることを国民が知ってしまう。大統領への支持は地に落ち、政権は「死に体」となる。戦争を進めても、引いても、大統領の失脚や暗殺を企てるクーデターが起こり得る。

ロシアは、ウクライナに対して一切妥協せず、非常に強硬な態度で停戦交渉に臨んでいるようにみえる。だが、実はロシアは頭を抱えているのではないか。どんな交渉カードを出したところで、まったく先の展望が見えない「進むも地獄、引くも地獄」な状況に陥っているようだ。

この膠着した状況を脱するには、そもそもロシアがなにを望んでいたのか、原点に戻ってみることではないかと思う。ロシアの望みは、約30年間続いたNATOの東方拡大が止まること。端的にいえば、東欧諸国・バルト三国の支配を失ったロシアが、ウクライナだけは失いたくないということだ。

繰り返すが、米国・NATOはすでに勝者だ。ウクライナのNATO加盟はないと確約しても失うものがあるわけではない。加えて、ロシア軍のウクライナからの完全撤兵を条件に、ゼレンスキー大統領が一旦退陣し、議会を解散する。

ただし、ロシアの傀儡政権を認めるわけではない。大統領選挙と議会選挙を実施する。大統領選にはゼレンスキー大統領も、親露派も出馬できる。ウクライナは民主主義国だ。あくまでウクライナの将来は、ウクライナ国民が決めるべきである。ここは絶対に譲らない。

これだけ事態がこじれてしまうと、ベストだという案をみつけるのは難しい。現時点でいえることは、ロシアが懸念する安全保障上の最大のリスクを取り除いて、ロシアを落ち着かせること。「力による現状変更」は断固として認めないこと、ウクライナの将来は、国民が民主主義的手続きで決める。この2つをどうバランスさせるかが重要ではないかと思う。

image by: Sasa Dzambic Photography / Shutterstock.com

上久保誠人

プロフィール:上久保誠人(かみくぼ・まさと)立命館大学政策科学部教授。1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。主な業績は、『逆説の地政学』(晃洋書房)。

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