プーチン最大の誤算。“民度の高い”ウクライナ人の前に散る大国ロシア

2022.03.18
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停戦交渉が進展を見せぬ中、犠牲者が増えてゆくばかりのウクライナ紛争。もはやすべての常識的な国家の信用を失ったロシアですが、そもそもプーチン大統領はなぜこのような軍事行動に出てしまったのでしょうか。今回、その理由を地政学的見地から解説するのは、立命館大学政策科学部教授で政治学者の上久保誠人さん。上久保さんはロシアがウクライナを死守しなければならない理由を詳説した上で、プーチン大統領にとってこの戦争がもはや「進むも地獄、引くも地獄」であると断言。さらにロシアがウクライナ侵攻で完全に失ったものを記すとともに、泥沼と化した現状の解決案を提示しています。

プロフィール:上久保誠人(かみくぼ・まさと)
立命館大学政策科学部教授。1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。主な業績は、『逆説の地政学』(晃洋書房)。

泥沼化するウクライナ情勢、そもそもロシアは何を望んでいたのか?

ウクライナ紛争が泥沼化している。ロシア軍は、ウクライナを数日以内に降伏させる短期戦を目論んでいた。だが、各地でウクライナ軍と市民の強い抵抗に遭った。ウラジーミル・プーチン露大統領は、ロシア軍がウクライナに入れば、大歓迎で迎えられると思っていた。ウクライナ国民が、自らウォロディミル・ゼレンスキー大統領を引きずり下ろし、新しい親露の大統領を選ぶと思っていたようだ。しかし、プーチン大統領の楽観的な思惑は外れた。

一方、米国・NATOの計算通りに事態が進んではいない。ウクライナ紛争が始まる前、ジョー・バイデン米大統領やボリス・ジョンソン英首相が、「大国ロシア」が今すぐにでもウクライナに侵攻すると煽り続けていたようにみえた。だが、それはロシアの弱みを見透かして追い込んでいたのであり、ロシアが無謀な戦争を強行すると思っていなかった。

ロシア経済は戦争に耐えられる構造ではない。石油・天然ガスを単純に輸出するだけで、旧ソ連時代の軍需産業のようなモノを作る技術力を失い、製造業が発展していない。これでは、石油・天然ガスの価格の下落が経済崩壊に直結する。

現在、世界の原油・ガス価格は高騰している。しかし、原油・ガス価格の決定権を究極的に持つ世界最大級の産油・産ガス国・米国が「シェールオイル・ガス」を増産し、石油・ガス価格が急落すれば、ロシア経済はひとたまりもない。

ロシアがウクライナに侵攻し、「力による現状変更」を強行すれば、欧米から経済制裁を受ける。ロシア経済はそれに耐えられない。ゆえに、米国やNATOは、ロシアが戦争を始まると本気で考えていなかったのだ。

ロシア軍は、徐々に首都キエフを包囲している。ウクライナ軍の奮戦は驚嘆に値するが、どこまでロシア軍の攻勢にどこまで持ちこたえられるかわからない。しかし、ロシアがウクライナを制圧したとしても、ロシアは戦争に勝利できない。この戦争は、ロシアにとって「進むも地獄、引くも地獄」である。

ウクライナ紛争を、世界全体から俯瞰的にみてみたい。東西冷戦終結後の約30年間で、旧ソ連の影響圏は、東ドイツからウクライナ・ベラルーシのラインまで後退した。たとえ、ウクライナを制圧しても、それはリング上で攻め込まれ、ロープ際まで追い込まれたボクサーが、やぶれかぶれで出したパンチが当たったようなものだ。

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