習近平がプーチンを説得か。ウクライナ紛争停戦「3つのシナリオ」

 

次に中国の政局との関係ですが、現時点では、李総理の演説がかなり厳しい現状への批判が入っていたとか、江沢民とコンビを組んでいた朱鎔基元首相などが、習近平の「続投に難色」を示しているといった報道が飛び交っています。現状は秋の党大会を見据えつつ、いろいろな動きが出ているのだと思います。

具体的には、習近平が続投するのか、その場合に総理が交代するのかどうか、7名の常務委員の顔ぶれがどう変化するのかという問題ですが、大事なのは顔ぶれではなく、政権全体の方向性です。あくまで経済優先、国際社会との協調優先で行くのか、それともロシアを擁護しつつ台湾に圧力をかけるなど「経済より安保」という路線を濃厚にしてゆくのか、この路線闘争という問題が重要です。

例えばですが、習近平が仮に2期10年で大人しく退任して、これまでの規定通りに新しい人物に主席の座を譲るとして、それが例えば子飼いの陳敏爾であったとします。その場合に党内基盤が弱い陳が求心力形成を焦って、強硬路線に突き進むというようですと、ほとんど最悪のコースになってしまいます。

反対に、習近平が続投するにしても、李総理の後任に胡春華など他派閥の人間を入れて、バランスを取って行くようなら、当面は安定するのだと思います。陳がトップになるにしても、例えばですが陳主席、胡総理の「ワンツー」になって、全体としてバランスが取れ、陳も穏健路線で安定した政治ができる環境でスタートできるのであれば国際社会としては安心です。

可能性は低いですが、激しい政争の結果、習近平が敗北して引退、当面のトップに李克強がスライドしたとして、一見すると経済優先で良さそうですが、李の就任が強引であれば、全体的な方向性はガタガタする、そのうちに強硬路線が出てくるという可能性もあります。

とにかく、ウクライナ問題について、対ロシアの姿勢をどうするかという判断は、中国の次期役員人事に深く関係していると考えなくてはなりません。もしかしたら、中国が「政治の季節」に入っているので、機動的には動けないということを、プーチンは計算の中に入れている可能性もあります。

では、具体的なシナリオとしてどんなことが考えられるかですが?

1つのタイミングは、3月24日にブラッセルで開催される、G7首脳会合です。G7首脳が雁首を集めても、プーチンを動かすのは難しいでしょう。かといって、G7が認めてNATOで「NFZ(飛行禁止ゾーン)」をやるとか、ドイツとカナダを説得して、ポーランドにF35を供与、旧式戦闘機をウクライナに回すディールを復活させるというのも危険極まりないわけで難しいと思います。

経済制裁についても、これ以上の手札は少ない中で、では、どうしてG7ブラッセル会議などをやるのか、1つの可能性は中国を引っ張り出すためという考え方ができます。そう考えると、今回、岸田総理がインドとカンボジアに行って、それなりに「反ロシア」のメッセージを引っ張って来たというのも、手分けをして中国にメッセージを送っているという意味合いから受け止めることも可能です。

勿論、お互いに面子がありますから、中国がG7の顔を潰すように動くことはないでしょうし、反対にG7が中国に対して卑屈になるということもないでしょう。ですが、中国として、G7会合のタイミングで何かメッセージを出すということはあり得ると思います。

ですが、G7に習近平が来るというのはないでしょうし、G7の7人に対して、習近平がビデオで会議参加というのも対等性を欠くことになります。

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