習近平がプーチンを説得か。ウクライナ紛争停戦「3つのシナリオ」

 

この後のパターンですが、ロシアの行動パターンについて、歴史に事例を求めるのであれば、

1)ナポレオン戦争やナチス侵攻のように、厳寒期の地の利を利用して悲惨なまでに持久戦をやって勝利。

2)日露戦争の奉天会戦のように、士気の高い敵に押される中で、処分覚悟で司令官が撤兵、皇帝は司令官を更迭したが撤兵は承認。

3)日論戦争の最後は、海戦敗北後に米国の仲裁で和平。

4)ロシア革命は実際は第一次大戦の従軍兵士が、戦争に疲れて反逆したいというエネルギーをレーニンが巧みに利用して実施。

5)スターリンは悪どい手段で政争に勝利したのちは、No.2候補が頭角を表すと理由をつけて粛清し、ライバルのない状態を実現して長期の恐怖政権を死ぬまで維持。

6)フルシチョフは休暇から戻ると、指導部内で一方的に解任され、その後はブレジネフ、コスイギン、ポドゴルヌイの3頭政治に移行。

7)ゴルバチョフは、改革を進める中で守旧派軍部のクーデターに遭遇。クーデターは未遂となるものの、求心力を喪失してエリツィンの台頭を許す。

8)そのエリツィンは、健康問題等で判断が鈍る中でプーチンに巧みに権力を奪取される。

といったパターンがあります。一部には「ゴルゴ13」を雇ってプーチンを「消す」しかないなどというマンガのような話もありますが、歴史に事例を求めるのであれば、この8つのパターンのどれか、もしくは組合わせということになるのではと思います。

例えばですが、1)はロシアから見て今回は無理ということですと、4)とか7)のように軍の一部もしくは多数がプーチンに反旗を翻すということは考えられます。勿論、プーチンは特に近年は「歴史オタク」と化していて、この種のリスクに対しては最初から手を打っているという説もありますが、しかしながら前線の状況、そして全国の状況に照らして考えれば、可能性はゼロではありません。

一方で、プーチンは5)のスターリンのように政敵を次々に粛清して延命するかというと、流石にそこまでのスケールの「闇」を抱えているとは思えませんし、反対に周囲の側近たちについても、6)のように「プーチン外し」をやってのける度胸やスキルは伝わって来ません。

そうなると、ロシア内部としては「ハードランディング」のシナリオというのは、現実的ではないということになります。ですから、一つの可能性としては、3)のように第三国が仲介して和平に持っていく、これが一番現実的です。

そして、現時点では大国の中でロシアと建前上のコミュニケーションのチャネルを持っているのは中国しかありません。

ここからは、推測になりますが、中国が仲介を行うかどうかという1点に集中して、その可能性を検討してみたいと思います。結論から言えば、「月内に中国が和平仲介を行う」という予測をしてみたいと思います。外れるかもしれませんが、外れた場合には、どうして成立しなかったのかを考えて先に進むしかありません。ですが、現時点では敢えて「2022年3月の月内に中国が仲介」というシナリオを描いてみたいと思います。

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