日本国憲法の草案者の一人ベアテさんが看破した日本人の封建思想

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日本国憲法の草案者の一人で、女性の権利の明記に尽力したベアテ・シロタ・ゴードンさんに関し、以前掲載した「日本人が忘れてはならない、ウクライナ人父娘と日本国憲法の関わり」で触れた評論家の佐高信さん。今回のメルマガ『佐高信の筆刀両断』では、ベアテさんが著書で語った日本人の民族的特性を紹介。憲法を「押しつけ憲法」と主張する人ほど、人権意識が希薄で封建主義的であると指摘しています。

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ベアテ・シロタ・ゴードンと日本

「ウクライナと日本国憲法」で紹介したベアテ・シロタ・ゴードンが自伝の『1945年のクリスマス』(平岡磨紀子構成・柏書房)にこう書いている。

「日本人というのは、本質的に封建民族だと私は思う。権力者の命令ならば、たとえ気が進まなくとも実行する。戦争の末期に、特攻隊の志願者を募った時、そのほとんどの若者は死にたくなかったのが、本音だったと思う。でも、一歩前に出る勇気よりも、一歩前に出ない勇気の方が日本では難しいのだ。

 

また、日本の道徳は、犠牲者的精神を発揮する人物を必要以上に美化する。その中にヒロイズムを感じる人も、他の民族より多いように思う。日本人に人権という概念を話しても通じない。わがままとか、個人主義とかいう悪意のあることばに置きかえられてしまうからだ」

書き写していても胸が痛いが、これが5歳から15歳までを日本で過ごし、「自分の故郷は日本なのだとしみじみ感じ」ていたベアテの言葉なのである。

ベアテの父、レオ・シロタはウクライナを故郷とし、ベアテはウィーンで生まれているが、ベアテたちユダヤ人にとっては特に「ウィーンはナチスに汚染された町」だった。彼らが日本に惹かれたのはユダヤ人に対して偏見をもたないということもある。

自伝には、GHQが日本国憲法の作成を急いだのは、極東国際軍事裁判で「天皇を戦犯に」という声が大きい中で、天皇を象徴にしてしまって中央突破する作戦だったとも記してある。

しかし、ベアテにとっては、天皇よりも女性の権利の確立が問題だった。明治憲法には「女性」や「児童」という文字はまったく入っていなかったからである。この草案に対して、日本側は「日本には、女性が男性と同じ権利を持つ土壌はない」と言って抵抗したという。「押しつけ憲法」などと言われるが、誰が押しつけと感じたかがわかるだろう。

日本国憲法が施行された1947年5月3日からしばらく経って、時の首相、吉田茂から草案に携わった25人に菊の紋入りの銀杯が贈られた。それを受け取ったベアテは「なぜ日の丸ではなく、天皇家の紋なのかわからなかった。異物を飲み込んだような気持だった」と記している。

日本人は封建性が天皇制を許しているのか、天皇制が日本人の中途半端さを温存させているのか。私も「異物を飲み込んだような気持ち」のままである。

1995年4月にベアテと対談した土井たか子はこう言っている。

「人権の条項が、憲法にこんなにたくさん盛り込まれて充実しているのは、草案者のベアテさんが女性で、生活者であったからだと思うのです。憲法学者ではなく、素人であったことが良かったと思います。憲法の専門家なら、いろいろな規約にとらわれるけれど、ベアテさんは人が幸せになるためには何が必要かを知っていて、その本質をズバリ書いてくださった」

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