ウクライナ紛争でも証明か。戦争は「英国が味方に付いた方が勝つ」という不敗神話

2022.04.19
 

泥沼化・長期化しているウクライナ紛争について、1つ言えることがある。それは「戦争は、英国が味方に付いたほうが勝つ」という「不敗神話」が、いまだに健在だということだ。

「不敗神話」の事例の1つは、大英帝国が歴史上初めて同盟関係を結んだ日本が、ロシアと戦った「日露戦争」だ。日本を目指したロシア海軍の「バルチック艦隊」が、大西洋から喜望峰を通過して、インド洋を進んだ時、休息と補給のために寄港すれば、ことごとく大英帝国の支配下で嫌がらせを受け続けた。艦隊が日本に着いたときは疲労困憊、万全の態勢で待ち構えていた日本艦隊の猛攻撃を受けて、ほぼ全滅の大敗を喫した。

また、大英帝国は日本に対して、戦争遂行のために必要な多額の資金援助を行った。日本が募集した1,000万ポンドの外国公債のうち、500万ポンドをロンドン市場が引き受けた。そして、ロンドン滞在中だった、ロシアを敵視するユダヤ系銀行家ジェイコブ・シフが支援して、ニューヨーク金融街が残りの500万ポンドの外債引き受けた。

さらに、日本にロシアに対して行った情報戦にも協力した。大英帝国の諜報機関がロシア軍司令部に入り込み、ロシア軍の動向に関する情報や、旅順要塞の図面など入手し、日本に提供した。日本が、ロシア国内の社会主義指導者、民族独立運動指導者などさまざまな反政府勢力を扇動して、デモ、ストライキが起こさせた工作活動の背後にも、大英帝国の諜報機関がいたことは、容易に想像できる。この工作は、後に「ロシア革命」につながっていったとする説がある。

「大国ロシアと戦う日本を支援した大英帝国」という構図は、ウクライナ紛争と被る部分がある。その他の戦争でも、英国が味方した方が勝利した。日英同盟が解消された後、日本は第二次世界大戦で英国に敗れた。

ウクライナ紛争から少し離れて、日本の安全保障政策について考えてみたい。日本の安全保障政策の基軸が「日米同盟」だということはいうまでもない。だが、中国の経済的・軍事的台頭に対応するために、「自由で開かれたインド太平洋戦略」が構想され、日米にオーストラリア、インドの4か国によるQUAD(日米豪印戦略対話)という多国間の安全保障体制の枠組みが成立した。今後注目されるのが、それに英国が参加することだろう。

英国は、EU離脱後に「グローバル・ブリテン」という新たな国家戦略を掲げている。EUに代わる地域との関係を強化することで、英国の国際社会におけるプレゼンスを再強化しようというものだ。

経済的には、オーストラリア、カナダ、ブルネイ、マレーシア、シンガポール、ニュージーランドと加盟11か国中6か国が「英連邦」加盟国である「TPP(環太平洋パートナーシップ協定)」に英国が加盟することだ。

軍事的にはインド洋・太平洋地域への再進出だ。例えば昨年、英空母クイーン・エリザベスが米海軍横須賀基地に初めて入港した。同空母は、米海軍の駆逐艦やオランダ海軍のフリゲート艦などNATO加盟国の艦船とともに打撃群を構成した。日本側も、英国の空母派遣を中国の台頭を念頭に置いた連携の象徴と位置付けている。

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