ウクライナ紛争でも証明か。戦争は「英国が味方に付いた方が勝つ」という不敗神話

2022.04.19
 

英国は、米英豪による新たな安全保障協力枠組み「AUKUS(オーカス)」の立ち上げに主導的な役割を果たしている。AUKUSは、潜水艦、自立型無人潜水機、長距離攻撃能力、敵基地攻撃能力などの軍事分野、サイバーセキュリティ、人工知能、量子コンピューターを用いた暗号化技術といった最先端テクノロジーの共同開発を主な目的とした協定である。

4月12日、産経新聞が、AUKUSが非公式に日本の参加を打診していると報じた。極超音速兵器開発や電子戦能力の強化などで日本の技術力を取り込む狙いがあるという。しかし、日本政府は、その事実はないと即座に否定した。

日本政府内には、AUKUS入りに積極的な意見がある一方で、日米同盟がすでに存在している中でAUKUSに参加する効果があるのか、懐疑的な意見もある。政府内で明確に方針が決まっていないということだろう。

しかし、日本の安全保障は、日米同盟が存在するから十分とはいえないのではないか。米国と英国は、得意分野が異なっている。安全保障分野においては、相互に補完し合う関係にある。つまり、日本は英国との協力から、米国とは違うメリットを得られる可能性がある。その1つは、例えば外国のスパイ活動の防止やテロ対策のための「インテリジェンス活動」だろう。

インテリジェンス活動には、

  1. 画像情報(イミント)
  2. 信号情報(シギント)
  3. 人的情報(ヒューミント)

の3つの基本形がある。イミントは、偵察衛星が撮影した画像や、航空機による偵察写真など画像や映像の情報を得ることだ。シギントは、相手国の通信を傍受することやインターネット上での通信の傍受、相手国のレーダーの波長を調べるなどで情報を得ることだ。米国は、高度な技術力を駆使して、これらの分野を得意としている。

一方、ヒューミントは、古典的な情報取得手段である。スパイを相手国に潜入させたり、相手国のスパイを懐柔したりして情報を得る活動だ。映画「007シリーズ」が有名な英国は、伝統的にヒューミントが強い国である。

英国は、旧植民地だった国などで構成される「英連邦」を中心として、世界中に広く深い人的ネットワークを築き、情報網を持っている。オックスフォード、ケンブリッジ、ロンドンなどの大学を卒業した留学生のネットワークもある。BP、シェルなどオイルメジャーやHSBC(香港上海銀行)グループなど多国籍企業による資源・金融ビジネスのネットワークなどがある。これらの多様で複雑な人的ネットワークを、インテリジェンス活動に活かしているのだ。

英国のインテリジェンス活動を、私が英国在住時(2000~2007年)にみたことから紹介してみたい。例えば、英国の「テロ対策」である。その特徴は、例えば、英国のロンドン市内やヒースロー空港に「自動小銃を持った警官」の姿がほとんど見られなかったことである。

2001年の「9.11」などテロが頻発し、世界中で警戒態勢が強化された時期で、例えば、成田空港に入るためには、見送りに来ただけの人でもパスポートを提示しなければならなかったが、ヒースロー空港では駐車場に車を停めてターミナルに入るときに、パスポート提示を求められたことは一度もなかった。

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