中国の仕掛ける「債務の罠」
この中国の動きに、欧米諸国は警戒心を募らせています。アフリカの資源を中国にごっそり持っていかれるとともに、中国の経済支援の在り方に問題があるからです。
中国は、アジア、アフリカ諸国を支援する際に「条件をつけない」のです。ほかの欧米諸国や日本の場合、「経済援助が軍事目的で使われないこと」「人権に問題がある政権には援助しない」などの条件がつけられます。しかし、中国の場合は、そういう条件は一切抜きにして、「何に使ってもけっこう」ということで援助が行われるのです。そのため、中国の援助は、軍事独裁政権の武器として使われるケースがままあり、人権侵害を間接的に手助けするということも生じるのです。
たとえば、ムカベ大統領の人権侵害行為が国際問題ともなったジンバブエにも、中国は多額の経済援助と武器の輸出をして、国際的な非難を浴びました。
また冒頭にご紹介したスリランカの場合も、ラジャパクサ一大統領の一族が、スリランカの大臣の3分の1を占めるなど、明らかに腐敗状態にありました。このラジャパクサ一大統領は、親中派であり、大統領就任以来、国の政治経済を極端な親中国の方に舵を切りました。その結果、債務の罠にはまり、経済危機に陥ってしまったのです。
中国とすれば、これまで自国がさんざんやられてきたことをやっているだけということになります。というより、これまでやられてきた分をやりかえしているのかもしれません。
が、欧米諸国や日本は、19世紀から20世紀にかけての帝国主義的な政策はもはや行っていません。帝国主義政策は様々な弊害があり、世界を決して幸福にしないということがわかったので、欧米諸国や日本は、世界経済において、新しいモラルを構築してきたのです。中国はその新しいモラルを無視し、旧時代の帝国主義的な行いをしようとしているのです。
このままいけば、今後も、第2、第3のスリランカが出てくることになるでしょう。アジア、アフリカ諸国の中には、資源や国土の利権を中国にごっそり持っていかれる国が続出するかもしれません。
中国がこのようなモラルに反するような海外支援を行っている背景には、中国自身の危機意識が大きく関係しています。中国は世界第2位の経済大国になったとはいえ、決して安泰ではない「重大なリスク」を抱えているのです。次回は、この中国が抱える「重大なリスク」について、お話ししたいと思います。
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