採取されると不都合なのか。福一原発処理水を1km先の海に放出する謎

2022.04.21
 

東電は「安全なレベルまで海水で希釈してから海洋放出するので問題ない」などと説明していますが、これは完全にペテンです。どれほど海水で希釈しようとも、900兆ベクレルというトリチウムの総量は変わりません。たとえば、人間が1グラム摂取すると死んでしまう毒薬があったとします。これを水で薄めて飲めば、死ななくなると思いますか?100倍に薄めようとも、1,000倍に薄めようとも、薄めた水をすべて飲めば、その人は死んでしまうのです。

しかも、これは「トリチウムしか残留していない処理水である」という東電と政府の大嘘を鵜呑みにした場合の話です。これは、2021年4月14日に配信した第114号の「海洋放出という破綻したシナリオ」にも詳しく書きましたが、2018年8月、メディアのスクープによって、信じられない事実が発覚したのです。当時、約89万トンまで溜まっていた自称「処理水」のうち、84%に当たる約75万トンが安全基準を満たしていなかったことが発覚したのです。それも、基準値を大幅に超えたストロンチウム90、ヨウ素129、ルテニウム106、テクネチウム99などの放射性核種が次々と検出されたのです。

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最も危険なストロンチウム90は、含有量の高い貯水タンクのものは1リットル当たり約60万ベクレル、なんと基準値の約2万倍でした。他の放射性核種も、基準値の数十倍から数百倍のものが数多く検出されました。これのどこが「処理水」なのでしょうか?だからあたしは、自称「処理水」と呼んでいるのです。つまりは、当時の安倍晋三首相が「汚染水処理の切り札」として鳴り物入り導入した多核種除去装置「ALPS(アルプス)」に、期待したほどの除去能力がなかったということなのです。

現在、130万トン以上ある自称「処理水」の約70%は基準値を超えており、基準値の100倍を超えるものも10万トン以上も存在します。「ALPS」の処理能力は1日500トン、3基あるので1日1,500トンですが、100万トン以上の処理水を再処理するためには、毎日増加し続ける新たな汚染水の処理と並行して行なった場合、3基をフル稼働しても3年以上は掛かってしまいます。

その上、一度の処理で基準値の2万倍も残留している猛毒のストロンチウム90が、もう一度処理しただけで基準値以下になるとは、とうてい思えません。他の放射性核種が残留している自称「処理水」も、その残留率が基準値を大幅に超えているタンクのものは、二度や三度の再処理では、基準値以下にはできないでしょう。

結局、東電と政府は、この事実にフタをして、あくまでも「トリチウムしか残留していない処理水である」「そのトリチウムも安全なレベルまで海水で希釈してから海洋放出するので問題ない」という二重の大嘘で押し切るつもりなのです。そして、いつものようにパブリックコメントの結果を無視し、いつものように地元の漁業関係者や首長の頬を札束で叩き、海洋放出を強行するつもりなのです。

東電も政府も、この自称「処理水」を「安全だ」と言い張り続けていますし、麻生太郎副総理などは「飲んでも問題ない」とまで公言しました。それなら、目の前の港湾へ放出すれば良いじゃないですか。どうして、莫大な予算をかけて沖合1キロまで海底トンネルを建設するのでしょうか?もしかすると、海洋放出している自称「処理水」を誰かに採取され、分析されると困るのでしょうか?

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