『鎌倉殿の13人』はどう描くか。見直される平家と評価を下げる義経

 

源平合戦について筆者の勝手な解釈を記します。

歴史好きな読者ならご存じでしょう。源頼朝を担いで挙兵した関東の武士団の多くは、源氏ではなく平氏の流れを汲む者たちでした。頼朝、頼家、実朝と源氏将軍が三代で絶えた後、鎌倉幕府の実権を握った北条氏も平氏です。この為、日本史には源平交代思想、つまり、源氏と平氏は交代で天下を治める、という考えができました。

神輿は頼朝という源氏の嫡流ですが担ぎ手は平氏ですから、源平合戦は平氏同士の戦いともとれます。

では、どうして平氏同士が戦ったのでしょうか。

以下は筆者の妄想です。

頼朝を担いだ武士団の多くは良文流平氏(よしふみりゅうへいし)でした。平良文の末裔たちです。平良文は平将門の叔父で、将門が鎮圧された時は鎮守府将軍の任にあって陸奥国にいました。将門滅亡後、彼を討伐した平貞盛や俵藤太こと藤原秀郷は残党狩りをしましたが良文は匿い、将門の娘を長男の嫁に迎えました。

長男と将門の娘との間にできた子供たちが千葉氏、上総氏、江戸氏となります。また、他にも良文の子孫には梶原氏、三浦氏など、頼朝を担いで源平合戦を戦った者たちがいました。

一方、都で権勢を誇った清盛の平家一門は将門を討った貞盛の子孫です。更に言えば、源平合戦後に頼朝に滅ぼされた奥州藤原氏は藤原秀郷の後裔です。

こうした観点からしますと、源平合戦、奥州藤原氏滅亡は将門の子孫による復讐、将門の怨霊が平家と奥州藤原氏を祟り滅ぼした、と言えるのではないでしょうか。

なんて、伝記小説になりそうですね。

筆者は古典の、『平家物語』ではなく、吉川英治の、『新平家物語』で平家一門の隆盛を読みました。吉川作品は、前編は清盛、中編が木曽義仲、そして後編は源義経を主人公に据えて壮大な歴史絵巻が展開されます。若き日の平清盛の凛々しさ、義仲の純真さ、もちろん義経は悲劇のヒーローとして描かれ、全編を通じて阿部麻鳥という架空人物が登場して英雄たちの栄枯盛衰を見届けます。

長大な作品ですがご一読されてはいかがでしょう。全巻を読むのは大変だと思われる読者は、平家の都落ちの場面、弁慶が熊野別当湛増を味方につけるべく乗り込む場面だけでもお読みになることを勧めます。

(メルマガ『歴史時代作家 早見俊の「地震が変えた日本史」』2022年4月22日号より一部抜粋。この続きはご登録の上、お楽しみください)

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1961年岐阜県岐阜市に生まれる。法政大学経営学部卒。会社員の頃から小説を執筆、2007年より文筆業に専念し時代小説を中心に著作は二百冊を超える。歴史時代家集団、「操觚の会」に所属。「居眠り同心影御用」(二見時代小説文庫)「佃島用心棒日誌」(角川文庫)で第六回歴史時代作家クラブシリーズ賞受賞、「うつけ世に立つ 岐阜信長譜」(徳間書店)が第23回中山義秀文学賞の最終候補となる。現代物にも活動の幅を広げ、「覆面刑事貫太郎」(実業之日本社文庫)「労働Gメン草薙満」(徳間文庫)「D6犯罪予防捜査チーム」(光文社文庫)を上梓。ビジネス本も手がけ、「人生!逆転図鑑」(秀和システム)を2020年11月に刊行。 日本文藝家協会評議員、歴史時代作家集団 操弧の会 副長、三浦誠衛流居合道四段。 「このミステリーがすごい」(宝島社)に、ミステリー中毒の時代小説家と名乗って投票している。

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