「ものを言い合える関係性」で計画を進める
保村氏は「ガレーラ立川」をプロデュースしたいきさつについてこのように語る。
「いただいたテーマは『賑わいの創出』。ここは立川の中でも最もアンダーグラウンドな土地ですが、アンダーグラウンドだからこその空気感を大切にした。アレンジの仕方によっては艶っぽさが生まれる。そこで、あまりつくり込みをしないように考えました」
一覧表にあるとおり、出店している店の本社が立川市、武蔵野市、日野市となっているのは、保村氏と交流のある地元のメンバーで、保村氏が声を掛けて集めたから。最初に各オーナーに確認したことは、周りの商圏とかぶる商売はしないこと。それ以外の業態や価格構成、客単価について話し合うことは特にしなかったという。
「出店をお願いしたところはみな、しっかりとおいしい料理を出して、しっかりとおもてなしができるところ。業態の調整については私が行なった。とは言ってもメンバーが一堂に会して5分くらいで話がまとまった」(保村氏)
しかし、店に入ったとたんに圧倒される空気感はなぜ生まれるのだろうか。これについて保村氏はこう語る。
「ここの空間に『体感』が存在しているからです。それは『うわっ』という感動が、一つの空間の中に全部がつながっている状態。これを個店でつくり上げることができませんね」
「『体感』をつくるために大切なことは『ゾーニング』。ここから入るとこのように感じるだろうなだとか。ラブホテルの横は裏路地だし、その近くにはバーやしっぽりと日本酒を飲む店を集めた。一方で、元気があってポップな動きができる店は入口近くの表側に集めた。これはみんなで話し合いながら、なんとなく収まった。これによって、施設全体のパワーが最大化する空間が出来上がった」
ここのゾーニングが成功している要因は、何よりも保村氏と交流のあるメンバー相互が取り組んだことであろう。「ものを言い合える関係性」が一体化することによって、施設の中に「体感」を創出しているだろう。これが全く畑違いで、お金だけを目的に集まってきている人たちと取り組むと、このような形にはならないはずだ。