ウクライナ侵攻の恐怖心を政治利用。敵基地攻撃能力を熱望する自民の姑息な手口

 

憲法第9条第2項で保持を禁じられている戦力について、政府は「自衛のための必要最小限度の実力を超えるもの。性能上専ら相手国の国土の潰滅的破壊のためにのみ用いられるいわゆる攻撃的兵器。例えばICBM、長距離核戦略爆撃機、長距離戦略爆撃機、あるいは攻撃型空母」と説明してきている。

前記のJSMやJASSMなど長射程のミサイルを航空自衛隊の戦闘機に積み、日本海上で発射すれば、相手国の国土を破壊できる長距離戦略爆撃機と同じ機能を持つことになる。

これについて防衛省は「敵基地攻撃」でなはく、島嶼防衛のためだと主張してきた。相手のミサイルの射程外から自衛隊員の安全を確保しつつ攻撃する「スタンド・オフ・ミサイル」として使用するという説明により、慎重姿勢の公明党を説得した経緯もある。

しかし、島嶼防衛なら南西諸島への配備が想定されるが、そこは中国のミサイルの射程内であり、「スタンド・オフ・ミサイル」という説明は成り立たない。

空母も、準備が進んでいる。海上自衛隊史上最大の艦艇である護衛艦「いずも」を最新鋭ステルス戦闘機F35Bを搭載できるよう改修する予算が22年度に計上された。いわゆる空母化である。空母は戦闘機を搭載して他国を狙える攻撃的兵器だ。

岸田首相は「敵基地攻撃能力の保有を含めて、あらゆる選択肢を排除せず検討し、必要な防衛力を強化する」と方針を示している。

だが、敵基地攻撃能力の保有は、もはや既成事実になっているといっていい。自民党国防族は、この機に乗じて、国防の基本を定める三文書に書き込み、防衛予算の倍増を目論んでいる。「専守防衛」をなし崩し的に捨ててしまっていいのだろうか。こういう時こそ、冷静な議論が必要である。

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image by: 首相官邸

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