ここで戦争の国際化と敢えて表現したのは、現時点までは、ウクライナの背後にNATO勢力が控えていることは明白でも、戦場はウクライナ国内に限られており、戦火がロシアや周辺国に及んでいない状況(注:モルドバやジョージアの親ロシア派エリアには攻撃が及んでいますが)が、ウクライナ周辺国に拡大することを意味しています。
そうならないことを切に祈りますが、いろいろと提供される情報を総合的に分析した場合、あまり楽観視できる状況でないことは皆さんと共有しておきたいと思います。
もしここで戦争の国際化のベクトルが、西側だけでなく、ロシア領土を超えて東側にも広がるような事態になったら、その先にいるのは、日本です。
通常、戦争の戦略においては、戦端を複数開くことは決して賢明だとは考えられていませんが、もしミサイル戦力の活用による多方面への同時攻撃を意図していたら…。
他国が報復としてロシアとの交戦状態に入る中、一応、自衛戦力に限られている我が国はただ戦禍に見舞われるだけなのでしょうか。
プーチン大統領に近しいとされる数人曰く、先述の“プーチン大統領の十字”のエピソードを受けて、日本に対して核戦力を使用することは考えられないとのことですが、追い込まれたリーダーがどのような行動に出がちかという傾向を見てみると、不安は払しょくされることはありません。
現在、核廃絶に向けた国際的なキャンペーンを広島から拡大する取り組みのプリンシパル・ディレクターを務める身としては、あまり核の脅威について熱く語ることは避けたいところなのですが、規模の大小に関わらず、核兵器が使用されうる可能性がこれまでになく高まっているように感じています。
このように話していると、きっと「日本が何をしたっていうんだ!悪いのはウクライナに攻め込んだプーチンだろう?」というご指摘を受けるかもしれませんが、日本がG7と歩調を合わせてロシアに課した経済制裁は、解釈によっては【大量破壊兵器の一種】であり、ロシアの企業や金融機関、ロシア人の生活、そして生命さえも破壊し、罪のある者のみならず、無実の一般市民にも致命的な打撃となる攻撃だという意見がちらほら出てきていることに、私たちは注意しなくてはなりません。
ラブロフ外相は「5月9日は通年通り対ナチス戦勝記念日であって、今回のウクライナ戦争とは無関係」と述べていますが、私は何らかのギアチェンジが起こるXデーになり得ると考えています。
その内容が本当は何なのか。それを現段階で知っているのは、恐らくプーチン大統領のみなのかもしれません。
しかし、私たちは、ウクライナ戦争は決して遠くで起きていて直接的に被害を受ける戦争ではないという考えを改める必要性に迫られていることに気づき、起こり得る危機に備える必要があると感じています。
私のカレンダーを眺めてみた時、5月9日の予定が多くの協議要請で仮押さえされていることがとても気になりますが、ゴールデンウイークが明ける5月9日、そしてその後の毎日が平和であることを祈っています。
私が今回描いた様々なシナリオが全てただの杞憂に終わりますように。
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