ビジョン揺るがず。モスバーガーは予測困難なコロナ禍でも右往左往しない訳

2022.05.12
 

予測は困難だが、ビジョンは揺るがない

予測が困難な状況のもとでは計画の立案よりも、できることを見つけては行動してみることに合理性がある。しかしそれが、単なる右往左往に終始してしまっては、マーケティングの悪手となる。

では、そこで右往左往に陥らないためには、マーケターは何に頼ればよいのか。予測は揺れ動き、戦略計画は定まらないわけだ。そのなかでも組織や個人は、自分たちは何者か、何をめざして未来に向けた日々の行動を続けるかの方向感覚を保つことができれば、未来に向かう歩みを着実に積み重ねていくことができる。

こうした方向感覚は、組織あるいは個人が、自分は何者かを振り返りつつ、未来に向けて自分たちの可能性をどのように広げていくべきかを考えることから生まれる。ビジョンと言い換えてもよい。

ビジョンとは、組織や個人の未来に向けた行動をどのように進めるかの意思の表明である。自らのビジョンを予測しようとする人や組織はないだろう。ビジョンと予測は、ともに組織や個人が未来に向けた行動を続けていくための言明だが、その役割や成り立ちは異なるのである。

予測は困難だが、ビジョンは揺るがない。このような状態を確立できている企業がコロナ禍のもとでも、動きを絶やさず、元気に市場の可能性をとらえていくことができているのではないか。モスバーガーは、こうした元気な企業のひとつである。

image by: Ned Snowman / Shutterstock.com

栗木契

プロフィール栗木契くりきけい
神戸大学大学院経営学研究科教授。1966年、米・フィラデルフィア生まれ。97年神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了。博士(商学)。2012年より神戸大学大学院経営学研究科教授。専門はマーケティング戦略。著書に『明日は、ビジョンで拓かれる』『マーケティング・リフレーミング』(ともに共編著)、『マーケティング・コンセプトを問い直す』などがある。

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