ロシアのウクライナ侵攻に反対する国々がロシアに対して経済制裁を行っていますが、それにより実は国内のマンション事情にも影響が出ているそうです。そこで今回は、メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』の著者で一級建築士及びマンション管理士の廣田信子さんが、その影響について詳しく語っています。
ロシアに対する経済制裁はマンションにも影響!
こんにちは!廣田信子です。
4月7日には、G7(アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、日本、イタリア、カナダの7つの加盟国による先進国首脳会議)が開催され、その首脳陣が、共同声明で「ロシアからの石灰輸入の段階的廃止や禁止を含む計画」を進めることを表明しています。
それを受け、岸田総理は4月8日、ロシアへの追加制裁として、「ロシアからの石炭の輸入を禁止する」と表明しました。「早急に代替案を確保し、段階的に輸入量を削減して、ロシアへの依存を低減する」としています。
石灰は、石灰石などのセメント原料を焼成するための主燃料です。2020年度、日本では、製造時における熱エネルギーの約72%を石灰が占めており、そのうち、ロシア産の割合が約5割で、セメント業界が、ロシア産石灰の禁輸で受ける影響は極めて大きいといいます。
セメント業界の大手は、ロシアからの輸入を下げる努力をしていますが、代替輸入はコスト面で高いハードルがあり、たいへんです。
ロシア以外の主要な輸出国は豪州ですが、ウクライナ侵攻前から、労働者の不足や豪雨によって、品薄感が強かったといいます。その上、ウクライナ侵攻で、欧州各国が、輸入をロシアから豪州に切り替える動きが相次いでいます。
他の地域も、日本までの海上輸送の距離が長い分、燃料価格の高騰により影響が大きいといえます。
セメント業界大手は、22年初頭に相次いでセメント製品を値上げしているものの原料費の価格高騰に伴うコスト増は転嫁し切れておらず、今後セメント製品、生コンクリートの更なる値上げは避けられない見通しだといいます。
ここのところ、鉄鋼製品の価格上昇も顕著です。これに加えてセメント製品、生コンクリートの価格上昇は、マンション建設にも大きな影響が出ます。これをどうやって乗り越えていくのか、ただでさえ、もうマンション価格が上限に達していると思われるのに…。
ウクライナ危機は、マンション建設の今後にも、大きな影響を与えます。中古マンション市場がより活発化する…ことも大いに考えられます。
何か危機が起こると、思いもかけない方向に進化が進むということもあります。これを機に、始まったばかりの木製マンション建築が一気に進むかもしれません。
● 低コストで工期も短縮可能な「木造」の中高層マンションが常識になる日(21年10月5日記事)
変化を怖れず、そこから生まれる進化を活かす…そう言う時代になりそうです。
image by: Shutterstock.com