激化する自民と維新の大喧嘩。右派論客の橋下批判に茂木幹事長が便乗

 

山口氏はこの件をめぐり橋下氏のみならず、維新にも宣戦布告した。5月13日公開の「橋下徹研究」。

私はてっきり、日本維新の会と橋下氏は現在は基本的には関係がないと認識していた。(中略)ところが、この問題について音喜多駿氏や足立康史氏といった日本維新の会所属の国会議員が、橋下市長(当時)には責任も問題もないと主張し、音喜多氏に至っては私の主張を「陰謀論」と決め付けた。(中略)「陰謀論」というのであれば、私はその国会議員と徹底的に戦わざるを得ない。

彼ら右派論客はすでに維新をも見限っているようにみえる。その流れは橋下氏の発言問題が起きるより前にできつつあったのではないか。

おそらく、昨年の衆院選で維新が大躍進したことと無関係ではあるまい。維新の勢力範囲がほぼ大阪に限定しているうちはまだしも、全国をうかがう存在となって、メディアへの露出が増え、維新の創設者である橋下氏や松井代表の傲慢で攻撃的な態度が鼻につくことも多くなった。敵とみなす政治家やタレントに名誉毀損だ訴訟だと脅しを乱発する姿勢もいささか常軌を逸している。

そこへもってきて、ウクライナ人の愛国心に水を差すような橋下氏の発言である。右派言論人たちは、自分たちとは似て非なる勢力として維新をとらえ、新たな敵として攻撃し始めたのではないか。

維新の増長を物語るかのように、大阪の府議や市議らの不祥事が相次ぎ、維新の政党支持率は、衆院選直後をピークに昨年末以降、低下が続いている。

安倍氏ら自民党タカ派と近い政治理念を持つ維新は、憲法改正や核共有の議論を促進する動きを強めるなど、保守層の取り込みに躍起だが、逆に維新離れの動きも顕著になっているといえよう。

昨年の衆院選で維新に15戦全敗した大阪の地で、茂木幹事長があえて橋下氏の名前を出し、維新を批判したのも、そんな背景があるからこそだ。

とはいえ、岸田自民党も、右派論客やネトウヨとの関係においては問題をかかえている。ことに、外務大臣だった茂木敏充氏を幹事長にし、新たに林芳正氏を外相に任命した人事への反発は大きい。幹事長になるべきは高市早苗氏で、親中派と目される林氏は外相として不適切、という意見がネトウヨ御用達のYouTube番組などで盛り上がり、今も続く反岸田、安倍待望の論調につながっている。

維新と右派論客は岸田自民党を嫌悪し、安倍政権の復活を待望する。右派論客と自民党は橋下氏を糸口に維新批判を展開する。なんとも、込み入った関係になったものだ。

この状況、裏返してみれば、野党陣営の弱体化がつくり出したとみることもできよう。立憲民主党は夏の参院選の1人区で、共産党や国民民主党との候補者調整が難しくなっているため、候補者の競合を事実上容認する方向だという。

このままいけば参院選に自民党が圧勝し、岸田政権は安泰だ。政変が起きて衆院解散をするようなことがない限り、3年間は国政選挙がない。だが、それもまた、安倍シンパの精神不安を募らせる要因ではあるだろう。

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