虎を捕まえるためには虎穴に入らなければならない。『潜入』は世界で最も秘密で残酷な独裁政権に潜入するために途方もなく危険な任務を遂行する2人の平凡な男に関する実際の潜伏スリラーだ。
デンマーク独立映画製作者マス・ブリュガーが演出した『潜入』は艦艇捜査技法を使用した。正体がばれるかもしれないが、命をかけるほどのことだったのだろうか。
ラルセンは「北朝鮮は国連制裁を受けながらも武器を売って外貨を稼がなければならなかったし、私たちはその切迫感を逆利用した」とし、「2,500万の北朝鮮住民が体験する苦痛に比べれば、それほど危険ではなかった」と話した。
彼は「神聖な北朝鮮のための闘争を撮影してユーチューブに上げる」として、ほとんどすべてのことを映像で記録した。隠しカメラで撮った場面もある。スウェーデン駐在北朝鮮大使は「万が一何かあったらわが北朝鮮大使館は知らない(責任を負えない)」と話した。
2020年末にこのドキュメンタリーが公開されるや北朝鮮は偽物だと言い放ったが、英国BBCは「金正恩委員長がかなり当惑するだろう」と評した。
ラルセンは引退した料理人で、現在は政府支援金を受けて生活している。『潜入』を準備して撮影する10年間は妻と2人の娘までだました。
元CIA要員に頼んで尾行を見抜く方法などスパイ技術を身につけたという彼は「日常の95%は私自身で、5%はスパイとして生きなければならないという指針に忠実だった」として「撮影を終えて妻に一種の告解をして現実に戻る瞬間が最も苦痛だった」と話した。
「北朝鮮が報復したり脅迫したりしたことはない」と述べた。そうすれば、このドキュメンタリーの内容が本物だということを自認する格好だからだ。ラルセンと家族はデンマーク情報当局の身辺保護を受けている。
原題『THE MOLE』は「スパイ」という意味。この日、彼が渡した名刺には「特別な話を持った平凡な人」と書かれていた。ラルセンは「私の特別な経験について講演し、自叙伝を書く計画だ」と話した。ドキュメンタリーは韓国国内の封切りを推進中だ。
「10年間、偽の人生を送ったが、北朝鮮の犯罪を知らせることができてやりがいを感じる。デンマークには『バカの幸運(fool’s luck)』という表現がある。9時に出勤して5時に退勤する人々は理解できないが、危険は危険だがそれだけに全てをかけてはじめて現実がある種の補償をしてくれるという意味だ。寂しかったが報われた。このドキュメンタリーの中の北朝鮮は偽物ではなく本物だ」。
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