プーチンでもゼレンスキーでもない。ウクライナ戦争の真の勝者

 

とはいえ、当のウクライナは今のところトルコ提案には関心がないようで、ゼレンスキー大統領やクレバ外相も「詳しくは聞いていないので、何とも反応できない」と述べたり、「あくまでもエルドアン大統領やトルコ政府がロシアに持ちかけている内容に過ぎない」と述べたりして、距離を置いており、このトルコの企みが功を奏するかは未知数です。

しかし、停戦に向けた動きが遅れれば遅れるほど、戦争は長引き、先述の通り、消耗戦の性格を帯びることになり、それは徹底的にウクライナおよびロシアを弱体化することに繋がっていきます。

そしてそれは同時に当事国以外の大多数の国々における“ウクライナ疲れ”を加速させ、ロシアのみならず、被害者たるウクライナまで、国際情勢において孤立と孤独を味わうことになりかねません。

1991年以降、欧米諸国が直接的・間接的に軍事行動を選択したケースでは、旧ユーゴスラビアのケースを除いては、イラク・アフガニスタン、そしてミャンマーの現状を見れば分かるように、かき回すだけかき回した後、関心と熱狂が一気に覚め、見捨てられることになりました。

イラクでは、サダムフセイン亡き後、国内の部族間戦争が激化し、今でも政情は安定しない中、昨年、アメリカはイラクでのプレゼンスをなくしましたし、アフガニスタンでは、駆逐したはずのタリバンの再興を後押ししてしまうという失態まで演じ、20年にわたって駐留しても、何一つ事態を快方に導くことはできなかったという状況もあります。ミャンマーに至っては、ラストフロンティアと持ち上げ、アウンサンスーチー女史を民主主義のシンボルに祭り上げた後、ロヒンギャ問題での意見の相違を機に一気に見捨てるという、国際政治の冷酷さを見せつけました。

いつになるかわかりませんが、ウクライナ戦争が何らかの形で解決し、停戦が成立した後、果たしてどれだけの国々が本気でウクライナの再興にコミットするでしょうか?

欧州各国については、地続きという地政学的な現実があるため、何らかの形で継続的にコミットし、同時にロシアによる自国への圧力に対応するかと思われます。

しかし、アフガニスタンの戦後復興で音頭を取った日本政府や、今回の対ロ制裁の音頭を取ろうとしたアメリカ、そして欧米と共同歩調を取ったカナダやオーストラリアはどうでしょうか?

旧ソ連崩壊後、ほぼ見返りを求めずにロシアを救済した日本政府は恐らくウクライナにも救いの手を差し伸べるだろうと信じますが、あとの国々は、よほどウクライナの戦後復興が生み出すマーケットに利権を獲得するチャンスがない限りは、対ロ抗戦への熱狂と関心が薄れるとともに、ウクライナに対する支援の輪からフェードアウトすることになるような気がします。

同様のことが起きた紛争国はその後、どうなったか?

国内情勢が破綻し、治安が悪化することは言うこともないことですが、ほぼ確実に武器のブラックマーケットと化し、“テロリスト”の温床となっていると言われています。

今回、ロシア・プーチン憎しという波に乗って欧米諸国からどんどんウクライナに武器が供与されていますが、アメリカ国防省が認めるとおり、供与した武器のありかを追跡することはほぼ不可能であり、戦闘によって、ロシア側に奪われた数も含め、推測できない状況が生まれています。

この後、ウクライナ戦争が“終わった”時、ロシアの侵略に立ち向かった欧米製の兵器はどうなるのでしょうか?

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