NYダウが一時1,000ドル以上も急落するなど、インフレの悪影響が広がるアメリカ。しかしバイデン政権は有効な対策を実施することなく、物価高騰が解消される気配は見られません。そのアメリカと覇権を争う中国も、政争にかまけて経済再建が二の次となっているのが現状のようです。かような状況はこの先いつまで続くことになるのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉彰彦さんが、米中それぞれが抱える政治事情を記すとともに、この流れが秋口まで継続する理由を解説。さらにその影響で、岸田政権が7月後半以降、経済的に厳しい状況に追い込まれる可能性を指摘しています。
※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2022年6月14日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報が届く冷泉彰彦さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ
肝心の経済問題から逃げている米中の政局
まずアメリカですが、経済がかなり厳しいことになっています。問題はインフレで、春先からかなりおかしな数字になっていたのが、ここへ来て加速している感じです。6月10日に公表されたCPI(消費者物価指数)では、5月のアップ率が前年比で8.6%という恐ろしい数字になりました。
日本のようなデフレ体質はないものの、アメリカでは、ここ20年ぐらいの間、物価がこれだけ問題になったことはありません。各メーカーも、小売も、あるいは卸なども含めてコンピュータによる生産管理と在庫管理が進んだことがまず一因です。
これに加えて、いい意味での企業間の競争があり、またもしかしたら悪い意味でのグローバル経済による空洞化と、価格の低下がありました。日本の百円ショップは、デフレの影響だと思いますが、デフレとは無縁のアメリカでも同じように「ワンダラー(何でも1ドル)」という業態があります。これはグローバルな分業によるコストダウンが効いているビジネスです。
また、消費者は消費者で、ネットの発達により自分が購入する価格が「本当に安値なのか」をサーチして、より価格に対して厳しい目を持つということも盛んです。そうした経済に関与するプレーヤー全体が「合理的に」振る舞うことで、物価の異常な高騰は避けつつ経済成長ができていたのでした。
その物価が大変です。ザクッと言うと、
「ランチでは、ファーストフードでもドリンク込みで16ドル」
「ディナーは、高級レストランでなくてもすぐに30ドル超え」
「国内航空券は、大陸横断だと往復800ドル」
「新車時価格が3万ドルの5年落ち中古が、ほとんど新車価格と変わらない」
「ガソリンは、2年前の倍」
「長年1ダース2ドルだった卵が4ドル」
ということで、生活コストという点では5割ぐらい上がっている感じがします。こうした状況を受けて、株式市場はここへ来てかなりキツく下げています。バイデン政権になって、コロナ対策に金を投入した結果、2021年の12月には3万7,000ドルまで来ていたNYダウは、現時点では3万500ドルということで、3万ドル割れが見えてきました。
そんな中で、市場が警戒しているのは、
「連銀(アメリカの中央銀行)がインフレ抑制のために1%という大幅な利上げをするかもしれない」
「このままインフレが続くと、買い控えが広まって不況になるかもしれない」
という2点です。この2点に関して市場は非常にナーバスになっており、不安定になっているわけです。
政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報が届く冷泉彰彦さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ