ほくそ笑むプーチン。米中の内政事情で泥沼化するウクライナ戦争

 

しかしながら、バイデン政権の動きは鈍いままです。物価高への対策としては、

「ロシアのウクライ侵攻を止めさせて、原油価格を安定させる」

「中国のゼロコロナ政策を止めさせて、生産体制を復活させる」

「中国と協議して、サプライチェーンと物流の問題を改善する」

という具体的な3つの政策を実施しなくてはなりません。また、この3つを実施すれば物価は沈静化します。ですが、バイデンは動きません。その代わり、バイデンと民主党が必死になっているのは、現時点では次の2つです。

「2021年1月6日の議会暴動事件について議会による公聴会を実施して、トランプの関与を暴き出す」

「5月以来頻発している乱射事件を受けて、銃規制を少しでも実現する」

という2つの政策です。どちらも大切ですし、民主党内の求心力にはなるでしょう。議会民主党は必死になってやっています。ですが、今現在のアメリカの課題は「1に物価、2に物価、3、4がなくて、5も物価」とでも言うような状況です。にもかかわらず、バイデンの姿勢は受け身そのものです。「中国とロシアが悪い」と言うことで、まるで自分に責任はないかのようなのです。

そこにはある種の計算があると思います。それは、この状況については共和党も同じように何もできないだろうという思いです。多分そうなのでしょう。ですが、バイデンが計算できていないのは、国民の不満は「現職批判」として、自分に向けられるということです。

勿論、バイデンにも計算があって、共和党がどんどんトランプ派になれば、中間層は離反して自分には有利になるということは考えているのだと思います。また、トランプ訴追の問題、銃規制の問題に続いて、この夏は妊娠中絶禁止法の合憲判断が予想されます。つまり民主党とその支持者にとっては、そうした「文化戦争」に燃えてしまうということであり、バイデンとしてはこれに乗って民主党支持者を固めるしかないということかもしれません。

ですが、バイデンにも死角はあります。それは、仮に何らかのキッカケがあって、共和党の大勢が「正気に戻る」という可能性です。つまりトランプの呪縛から自由になって、昔のような「小さな政府」+「自由経済」+「原則より実利の外交」に転じた場合には、バイデンに代わる勢力となりうるということです。

もう1つの可能性は、このままバイデンが求心力を失うというシナリオです。民主党内では、ここへ来て「2024年問題」が公然と語られるようになってきました。次回2024年の大統領選に、バイデンは出るのか、バイデン以外の可能性を考えておかなくていいのかといった議論です。

こうした議論が公然と出てくるということは、政権が揺らいでるということであり、今年、2022年11月の中間選挙の結果次第では、バイデン政権は死に体になってしまうかもしれません。問題は、今が6月ですから11月の中間選挙まで、まだ5ヶ月もあるということです。その間に、ドラスティックな政策が打てないようですと、アメリカは本当にスタグフレーション(インフレ下の不況)に陥ってしまうかもしれないのです。

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