有能な人々はロシアから既に脱出。崩れた「プーチン失脚」のシナリオ

 

考えられる最悪の状況は、プーチンがこのままトップに留まり続け、戦局はロシアにとってじり貧になり、やけくそになって核兵器を使用するという事態になることだろう。実際には、このまま和平に応じないと核兵器を使うぞ、という脅しをかけるだけで、使うことはないと思うけど、ウクライナや西側が挑発すれば、プーチンが怒り狂って核のボタンを押すことがないとは言えない。そうなっても世界は終わらないだろうが、ロシアは終わってしまう。

幸か不幸か、ロシアはエネルギーと食料を国民に供給することだけはできるし、紛争前に比べれば減ったとはいえ、まだ原油や天然ガスをヨーロッパに売っており、インドなども原油を買い付けているので、暫くは戦費が底をつくことはない。国民の生活は苦しくなったとはいえ、もともと貧乏な人達は、暫くは耐え忍ぶことができると思う。

しかし、このまま戦争を続ければ続けるほど、国際的な経済制裁は厳しくなり、戦死者は増え続け、輸入に頼っていた生活用品や贅沢品は枯渇して、国民の間には厭戦気分が広がり、いずれ戦争の継続はあきらめざるを得なくなり、和平交渉をするにしても、ロシアにとって極めて不利な条件にならざるを得ないだろう。

紛争が長引けば長引くほど、紛争が終結した後のロシアは、より悲惨になっていることは間違いない。指導者は権威主義的で国民は洗脳されている人ばかりといった、大きな北朝鮮のような国になっているかもしれない。敗北を認めて、西側のコントロール下に入れば、建前上は民主主義的な国になるということもあり得るが、経済の発展に必要な人材は払拭しているので、立て直すのは容易ではなく、最貧国から脱出するには時間がかかるだろう。

一人の愚かな指導者のために、国がここまで悲惨になるということが、まさか21世紀の世界で起こるとはね。日本も気を付けた方がいいよ。もう手遅れかもしれないけれどもね。

ところで、紛争が始まって以来、ロシアからのエネルギーの供給ばかりでなく、ロシアやウクライナからの穀物の供給も滞っているので、世界全体におけるエネルギーの価格と穀物の価格は高騰している。アフリカでは、ウクライナ侵攻を受け、小麦の価格が45%も上昇しているという。日本でも、輸入小麦の政府売り渡し価格を、2022年4月から17.3%引き上げた。

ウクライナは肥沃で、穀物の栽培に適し、小麦の生産高は、紛争前は世界7位(ロシアは4位)、大麦は世界5位(ロシアは2位)、トウモロコシは世界6位(ロシアは11位)で単位面積当たりの収量は、ロシアよりはるかに多い。ウクライナの穀物は、輸出拠点の黒海沿岸をロシアが封鎖しているために、容易に輸出できない。ウクライナは外貨の獲得を穀物輸出に頼っているため、紛争で穀物生産量が落ち、さらに輸出できないのは大きな痛手である。(『池田清彦のやせ我慢日記』2022年6月10日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by: Gil Corzo / shutterstock.com

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