尹錫悦の登場が持つもう一つの意味は、正常で普遍的な家庭環境と専門教育を土台にしたエリートたちがリーダーとして浮上したことだ。伝統的な体系を備えた国には例外なく指導者教育ルートがあり、課程がある。
英国は高校から大学に至るまで指導者を養成する教育システムを備えている。米国もハーバード・エール・プリンストンなど東部の名門大学(アイビーリーグ)が指導者の産室だ。日本もその学校を卒業してこそ指導者として出世する伝統がある。
尹大統領は大学教授の家に生まれた。70年の建国の歴史で初めてソウル大学をまともに卒業した人が大統領になったのだ。これは韓国の指導者像を正常化する意味がある。
韓国には、卑賤で劣悪な環境で育ちながら最高に達することについて「小川から龍が出る」と表現したりする。過去にはそれも通じた。
もはや違う。もはや龍は小川を突き抜けて湧き出るのではなく、システムによって教育を受けなければならない。
自分だけが立派で賢ければいいわけでもない。周辺が皆賢い環境で一緒に育ってこそ不正を排撃し、工程を学ぶ。もはや大韓民国もそのようなシステムを持つ資格がある時期に来ているということなのだろう。
尹錫悦政権登場の政治的意味は、左右交替の正常化が定着できるかどうかという試金石というところにある。韓国の「左右」はこれまで大きく歪曲されてきた。
左は親北朝鮮・容共・反日の沼に陥っており、保守・右派は親米・親日・反北朝鮮のフレームに放置されてきた。私たちは尹政権の登場とともに、この伝来的、慢性的理念論争にさらなる余地はないか調べる必要がある。
特に左派運動圏が金科玉条のごとく仕えてきた親北朝鮮・反米一辺倒の理念的慢性化から脱皮し、左派本来の進歩に復帰する変化を期待する。
それは民主党が586運動圏主導のくびきから脱し、社会の構造的矛盾から貧困・労働・分配に力点を置く本来の進歩的左派に復帰することだ。「尹・保守」に対抗する「民主党・進歩」の構図に進まなければならない。
「鳥は左右の羽で飛ぶ」という。鳥は2つの羽で飛ばなければならないが、政治は同時に2つの羽で飛ぶことができない。左の羽で飛んだら次は右の翼で飛ぶのが政治というものだろう。
保守政党である「国民の力」が尹錫悦を前面に出して公正・正義・法治の翼に例えられるならば、左派政党である「共に民主党」も平等と分配に重点を置いた本来の進歩の翼として飛ぶことが韓国の「両翼」のために望ましい。
軍も586も、もはやこの時代の必然の存在ではない。
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