知床遊覧船事故で明らかになった日本の船舶「安全性基準」の問題点

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4月23日に知床半島沖で発生した遊覧船の沈没事故では、乗客14名の死亡が確認され、12名の乗員乗客がいまだ行方不明となっています。痛ましい事故を起こした会社の社長に対して批判の声が止まないなか、「社長が素人」との批判の妥当性について質問を受けたのは、『永江一石の「何でも質問&何でも回答」メルマガ』著者で、人気コンサルの永江一石さんです。一級船舶免許を持つ永井さんは、人の命を預かる仕事で「社長が“ど素人”」であってはならないと断言。そのうえで、日本の船が「不沈構造」になっておらず、安全性基準が甘いという重大な問題について明らかにしています。

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知床遊覧船事件についての考察

Question

shitumon

いつもメルマガ楽しみにしております。知床遊覧船のニュースを見て「まるでうちの会社みたいだ」と思ってしまいました。知床遊覧船のニュースについてお伺いしたいです。

「社長が素人」だという批判があり、確かにその通りだと思いました。ただ、社長の立場の人間は必ずしもスペシャリストである必要はないのでは、とも思いました。

社長がジェネラリストとして優れていれば、海のことがわからない社長でもこのような事故は起きなかったのではと思いましたがいかがでしょうか?社長イコール専門家でなくてもうまくいっている会社はあると思いましたのでご意見お伺いしたいです。

永江さんからの回答

今回の件の問題は、社長がジェネラリスト云々以前にど素人であることと、そもそも日本の船が不沈構造でないことだと思います。

まず社長について、ジェネラリストかスペシャリストか云々の前にど素人過ぎます。実はわたしも船舶一級免許を持っているのですが、船の安全性も海の危険性も分からないのに船の運航可否や船体・船員の要件なんて判断できません。たとえ経験が浅くても船舶一級の免許くらい取って勉強すべきです。スカイダイビングでもバンジージャンプでも、万が一にも人の命に関わるサービスはど素人がやってはいけないものでしょう。

加えて、日本の船の安全性基準の問題もあります。例えばアメリカなどでは船の外板と内壁の間に発泡剤を充填して沈まない構造にしなければコーストガードの基準に達しないため販売できませんが、日本ではその安全性基準がありません。米国の基準(知る限りオーストラリアも)では船に大穴があいても24時間は浮いていないといけませんから、あの事故も米国なら助かったかもしれないわけです。また、発泡ウレタンを充填することで船体は非常に丈夫になります。

自分も昔はアメリカ製小型ボートを所有していて三宅島まで行っていました。仲間内は海外製のボートが多かったのですが、国産の場合は自分たちで発泡剤を充填していた人が大半です。重くなって燃費が悪くなるほか、床下の物入れがなくなります。そしてそもそも日本の船の工法がフレームを形成する既存工法で、最初から不沈構造にするために作られたアメリカ製とは大きく異なります。

こうした船の安全性基準も含めて、素人たちの無責任さの蓄積で起きてしまった悲劇だと思います。

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