大統領が知らなかったはずがない。ところが、通信が途絶えて国民を救えなかったような言いまわしをしてしゃべった。そして「今回の悲劇が対話と協力の機会を作り南北関係を進展させる契機に反転することを期待する」とまで言ってのけた。
国民の死体も見つけられなかった状況で、大統領が乗り出して対話と協力、反戦の機会を懇願したというこんなばかげた話は聞いたこともない。
他人の不幸に無関心な人がいる。弾劾という結果のためにセウォル号犠牲者がありがたくなったように、自分に有利・不利に近づいてこそ関心を持って価値を置く。
同事件の報告を受けた後の2日間、文在寅は国連テレビ会議で北朝鮮との終戦宣言を主張し、軍将官に会って韓半島の平和を強調していた。
国家安全保障会議は安保室長に任せ、夫人と同伴でアカペラ公演を観覧した。彼はただ関心がなかったのだと思う。これまで政府は、北朝鮮の蛮行を隠し、殺害公務員の越北説フレームを敷いてきた。
このように無関心だった彼(文在寅)を興奮させたのは、北朝鮮から受け取った通信文だ。悲劇を北朝鮮のために活用できると判断したためだろう。半月前、恥ずかしい手紙を出して国民に朗読し金正恩の生命尊重を称賛した。
文在寅だけではない。海洋警察の捜査過程で心理専門家3人に1人だけがイ氏が「賭博中毒」という意見を出した。「精神的恐慌」と判断を下した専門家は7人に1人だった。船舶で一緒に生活した同僚10人全員が「越北の可能性はない」と断言した。
越北情況のある現場の傍受情報を海洋警察が接した可能性はある。しかし、極限状況で生きるために表現した意思は、事実と断定できるものではない。捜査の基本だ。
にもかかわらず、海洋警察は「李氏がインターネット賭博に深く没頭し、精神的恐慌状態から現実逃避の目的で越北したものと判断される」と発表した。
李氏の借金まで膨らませた。明白な捏造捜査だ。与党政治家も加わった。シン・ドングン議員は「越北を敢行すれば射殺することもある」と話した。ヤン・ヒャンジャ議員は「あえて越北ではないと言い張る理由が気になる」と話した。
今も禹相虎(ウ・サンホ)議員は、「民生が深刻なのに、こんなことが懸案なのか」と遺族を2度殺害するような暴言を吐いたかと思うと、薛勳(ソル・フン)議員は、「何でもないことなのに」とまで言った。自国民が北によって射殺され焼却までされているのになんで何でもないことなのか。
この事件で最も猟奇的な存在は北朝鮮だ。しかし、文在寅と海洋警察、政治家の行動からも、私はぞっとする猟奇性を感じる。
彼らは、自分の無能さを隠すために、秋の海に落ちてもがき、悲惨な死を遂げた大韓民国の8級公務員を容赦なく国の裏切り者に追い込んだ。
多くの人がこのような国家暴力を審判し、被害者を救済するよう大統領として尹錫悦を選んだのだろう。天の導きがあったことだけは確かだ。
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