プーチンから離れて、トカエフはどこに行く?
トカエフは、プーチンから離れたいことがはっきりわかります。そもそもカザフスタンは、インド式の善隣友好外交をしてきました。ナザルバエフ前大統領は、ロシアと中国と良好な関係を維持してきた。加えて、アメリカや欧州とも悪くない関係を築いていたのです。
トカエフは、どうでしょうか?彼は、「プーチンとつきあっていると、ひどい目にあうぞ」と悟ったのでしょう。それで、距離を置いている。
そして、トカエフが見ているのは、中国です。トカエフは1970年、ソ連外務省附属モスクワ国際関係大学に入学。大学5年生の時、実習で半年間在、北京・ソ連大使館で勤務していました。1975年、ソ連外務省に就職。1983年には、10か月間北京に語学留学しています。1991年にソ連が崩壊した後は、カザフスタンの外務次官、外相、副首相、首相を歴任してきました。いずれにしても彼が「親中政治家」であることは間違いありません。
いままで、カザフスタンは、ロシアと中国の間で揺れてきました。しかし、今回のウクライナ侵攻でトカエフは、はっきり悟ったのでしょう。「世界を敵に回したロシアとつきあってもいいことはない。裏切って、これからは中国との関係を第一に考えよう」と。
プーチンは、ウクライナのNATO加盟を阻止するために、侵攻しました。あるいは、ルガンスク、ドネツクのロシア系住民を守るために。しかし、リアクションを見ると、得るものより失うものの方が明らかに多いのです。
たとえば中立国だったフィンランドとスウェーデンがNATOに加盟申請しました。現状トルコが反対していますが、いつまでも反対しつづけることはできないでしょう。そして、ウクライナとモルドバが、EU加盟国候補になりました。さらに、カザフスタンが、逃げ出しています。そして、ベラルーシのルカシェンコ大統領も、ウクライナへの派兵をかたくなに拒否しているといいます。
というわけで、ロシアの著しい求心力低下が起こっています。いつも書いていますが、ロシアは、すでに【戦略的敗北】を喫しているのです。
(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2022年6月25日号より一部抜粋)
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