ウクライナのルハンシク州を露軍が制圧。東部戦線異状ありで重大局面。ロシアの“泥棒船”を拿捕したトルコの思惑とは

2022.07.04
by たいらひとし
putin_zerensuki
 

ロシア国防省は3日、完全掌握を目指しているウクライナ東部2州のうち、ルハンシク州の全域を掌握したと発表した。当初はロシア軍の主張を否定していたウクライナ軍だが、参謀本部は「兵士の命を守るため撤退することを決めた」とし、撤退したことを認めた。ロシア軍が掌握を目指す東部2州の1つが陥落したことで、大きな局面を迎えることになりそうだ。

ロシアがルハンシク州制圧を宣言で重大局面

ルハンシク州の親ロシア派の武装勢力の指導者パセチニク氏は3日、SNSに「われわれの歴史に永遠に刻まれる日だ」などと投稿。ルハンシク州のウクライナ側最後の拠点とされていたリシチャンシクをロシア軍が支配下においたことをアピールした。NHKなどが報じた。

一方、ウクライナ軍の参謀本部は3日のSNSの投稿で、ウクライナ軍が占領地と境界から撤退したことを認めた。ロシア軍に迫撃砲、軍用機、多連装ロケットシステム、弾薬、人員などで優位に立っており、ウクライナ兵の命を守るための決断だったことを記している。

その後、ウクライナのゼレンスキー大統領も動画を投稿し、「敵が火力で勝る地域において前線から兵士を引き揚げることはリシチャンシクにもあてはまる。われわれの戦術と近代的な兵器の供給の増加によって、われわれは戻ってくるだろう」とルハンシクの奪還を目指すとの考えを示した。

戦闘の舞台はドネツク州へ&トルコがロシア船を拿捕

ルハンシク州を制圧後、ロシア軍は隣りのドネツク州への攻撃を本格化するとみられている。

ウクライナメディアによると、ロシア軍によるスラビャンスクに対する3日の砲撃で少なくとも6人が死亡、15人が負傷したとしている。

スラビャンスクのリヤフ市長はSNSで「ここ最近でもっともひどい砲撃だ」と投稿し、市内では約15の火災が発生したようだ。また近接する都市クラマトルスクでも砲撃がありホテルなどが破壊されている。

ロシア軍はルハンシク州に続いて東部2州を早期に完全制圧し、徹底抗戦の姿勢を崩さないウクライナとの停戦交渉を有利に進めたい狙いがあるとみられる。

一方、アメリカ国防総省は1日、ウクライナに対し、新たに8億2000万ドル=約1,100億円の軍事支援を発表。

ホワイトハウスの防衛にも使われていると言われる地対空ミサイルシステム「ナサムズ」2基や、アメリカが既に供与してウクライナが既に実戦使用している高機動ロケット砲システム「ハイマース」の追加砲弾などが含まれている。ウクライナの装備も拡充されつつあり、さらに戦闘が激しさを増す可能性がある。

また、3日にはトルコ税関当局がウクライナのかねてからの要請を受け、ロシアの会社によって運行されていた貨物船を拿捕した。ウクライナ南東部ベルジャンシクから盗んだとされる穀物約4500トンが積み込まれていたという。

ロシアとウクライナに対して中立の立場だったトルコがウクライナ側に味方する行動をとったことで、今後の展開が変わる可能性も出てきた。膠着状態が続いていた戦争に大きな動きがあるかもしれない。

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