ある論評者が「時間は尹大統領の味方だ」と言ったというが、私はそう思わない。時間が経つにつれてミスは多くなり、尹大統領のイメージは薄れ、彼の反対者たちはさらに猛威を振るうだろう。権力とはそういうものだ。
今から気を引き締めずに「大統領」を楽しむことに現(うつつ)を抜かすことになれば、彼に期待していた韓国政治のアップグレードは再び座礁するだろう。
尹大統領はまた、「わたしは失うものはない」という覚悟で臨まなければならない。国民は、人生で一瞬もその位置を夢見たことのない人にその座を任せた。
それだけに彼は失うものは何もない。基本に忠実にやるだけでも「上出来」という姿勢で臨めばいい。
人気にこだわる必要もない。ムン元大統領が世の中を見下し、ムンをして傲慢にさせたのは「世論調査支持率40%」だった。民主党の政権獲得を5年で台無しにしたのも「国会議席180」だった。
数字は人を傲慢にさせる。むしろ「人気のない大統領」を覚悟すれば、この社会の根本的な病的要因と対処することに力が注がれるだろう。
そのために尹大統領は万機親覧(=王様が国政の全てを親密に考慮する)するより、選択と集中の道を進んでほしい。彼は今自分が世の中を変えることができるという自信に陥っているのかもしれない。
しかし、世の中はそんなに簡単でも、容易でも、甘くもない。それなら、世界中のことに手をつけようとするより、必ずしなければならないことを選択し、それに集中して力を注ぐのがより効果的だろう。
その「仕事」がまさに「民生」であり、経済だ。民生が険悪になれば、これまで見せてくれたすべての「尹大統領らしさ」は、一場の春夢(いちじょうのしゅんむ=儚い夢)に転落してしまうだろう。
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