年間1万円のダウン。なぜ物価は上がっているのに年金額が減るか

2022.07.07
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多くの方の「老後資金の要」となる年金。そんな年金の支給額が令和4年の4月分から0.4%も減額となり、高齢者から不満の声が上がっています。物価高騰の流れが続くこのご時世にあって、なぜ年金は減らされてしまったのでしょうか。そんな疑問に明快な答えを提示しているのは、ファイナンシャルプランナーで『老後資金は貯めるな!』などの著書でも知られ、NEO企画代表として数々のベストセラーを手掛ける長尾義弘さん。長尾さんは今回、年金支給額と現役世代の給与との関係性と、彼らの給与アップが国民全体の幸せにつながる理由を解説しています。

プロフィール:長尾 義弘(ながお・よしひろ)
ファイナンシャルプランナー、AFP、日本年金学会会員。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。新聞・雑誌・Webなどで「お金」をテーマに幅広く執筆。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『最新版 保険はこの5つから選びなさい』『老後資金は貯めるな!』『定年の教科書』(河出書房新社)、『60歳貯蓄ゼロでも間に合う老後資金のつくり方』(徳間書店)。共著に『金持ち定年、貧乏定年』(実務教育出版)。監修には年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。

年金が下がった理由は、現役世代の給与に問題があった!

2022年4月から、年金の支給額が0.4%下がりました。

厚生労働省で発表している年金額でいうと、基礎年金(満額の場合)は6万5,075円が259円少なくなって6万4,816円です。厚生年金は、夫婦2人分の標準的な年金額は、22万0,496円が903円少なくなって、21万9,593円になります。

月額903円少なくなるということは、年間にすると約1万円少なくなります。年金だけの生活をしている人が多いと考えると厳しくなりますね。

さらに、いまは値上げラッシュが続いています。物価がどんどん高くなっていて、支出が増えています。そんな時に「なぜ!年金が減る?」と怒りを抱く人も多いかと思います。

なぜ、年金が減ったのかというと、それはコロナ禍で現役世代の給与が減ったからです!高齢者の年金だけが減ったのではなく、現役世代の賃金も減っているのです。

今回は、年金が減った理由は、どこにあるのか?を考えてみたいと思います。

現役世代の賃金が0.4%下がったから年金も下がった?

年金の支給額は、物価や現役世代の賃金によって毎年度増減しています。

2021年から、物価よりも賃金の下落幅が大きい場合は、賃金にあわせるというルールになりました。

これを受け、2022年度の改定の参考にした指標とは次の数値です。物価(2021年)はマイナス0.2%、現役世代の賃金(2018~2020年の平均)はマイナス0.4%、マクロ経済スライドのスライド調整マイナス0.3%です。

つまり現役世代の賃金がマイナス0.4%になっているので、2022年の年金の支給額がマイナス0.4%減ったというわけです。

「マクロ経済スライドがあるから、年金が減った」とか、「このまま、ずっと年金が減り続ける」などと勘違いをしている人がいます。これはまったくの間違いです。なぜなら、年金の改定率がマイナスになる場合はマクロ経済スライドは発動しません。また、これからずっと年金が減るわけわけでもありません。

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