興味深い分析があります。近年、有権者数は女性の方が男性を350万人程度上回っていて、投票者数では女性が男性より100~150万人程度多い状況が続いていました。
しかし、過去の投票者数の男女差を比較したところ、1989年の参院選では女性の投票者数が増え、男性との差が広がっていました。
そう、マドンナ旋風が吹き荒れたときです。選挙に立った女性だけでなく、1票を投じる女性も増えていたのです。
当時、女性の候補者の割合は21.8%で、選挙後の参議院の女性議員割合は17.5%、投票する女性も増えたことで、初めて自民党が過半数割れしましょた。
「ねじれ国会」は法案審議にも影響を与え、参議院での議論が先導する形で「育児休業法」の成立にもつながったのです。
しかしながら、女性たちが吹かせた嵐は、長くは続きませんでした。「一緒に女性を増やそう!」と闘ってくれる男性は少なかった。
「政治の問題」ではなく「女性の問題」とされてしまった。「変わらないこと」を選択したのです。
変わるための積極的な動き、例えばクオータ制の議論すら進められなかったのが、今の日本です。ならば、ぜひとも「ナショナル・マシーナリー」の創設を検討してほしい。
ナショナル・マシーナリーはジェンダー平等に関する直接の政策立案・調整機関で、形態は国によって異なるが、取り組むのはむしろ「男性問題」がメインです。
世界中の国や地域が1970年代後半から、ナショナル・マシーナリーを設置し、男・女の二分法から脱却しジェンダー平等という立場に徹しています。
例えば、カナダには内閣の中に女性の地位担当大臣と、閣議に出席して発言する権限を有する専任の女性の地位副大臣、その下に女性の地位庁(Status of Women Canada)を設置(1976年~)。フィリピンでは「フィリピン女性の役割国内委員会」が設置され(1975年~)、徹底的にジェンダー問題に関するモニタリングと、政策分析、調査研究を行っています。
また、韓国には、政務長官室というのがあり、これは官房長官が2人いてその2人目が女性問題担当の専任大臣という位置づけです(1988年~)。
もちろん、「今のままでいい。あくまでも自然増で」というのなら、形だけの数値目標を掲げ、場当たり的に候補者を比例名簿に載せるような意味のないことはやめてほしい。
そろそろ、立憲民主党や共産党に女性党首が出て、「女性が見える化」することを期待しています。
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