浮上した「外国勢力」の資金提供。安倍政権界隈が右派的言動で溢れていた背景

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憲政史上最長の通算8年8ヶ月もの間、首相として日本を牽引してきた安倍晋三氏。さまざまな功績を残した一方で、政権周辺には批判的な勢力に対して厳しい言葉を浴びせる向きが多数存在し、国民の間に分断に似た空気を充満させたこともまた事実です。その背景には一体何があるのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉彰彦さんが、読者からの質問に答える形で彼らの「恫喝体質」の源泉を明らかにしています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2022年7月19日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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Q. 安倍政権が「恫喝体質」によって日本政治のカルチャーを貶めたことについてどう思われますか?

Question

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いつも、多角的で冷静な状況分析に、大変勉強させていただいております。今回も、安倍晋三元首相の評価について、ユニークかつ説得力のある考察をありがとうございました。

安倍元首相が「右派ポピュリズムをひとつの足場としながらも、必要とあらば左派リベラル的な政策もかなり強力に推進することで大きなことを成し遂げた」という評価は、全く同感です。このことを一顧だにせず、安倍政権をひたすら蛇蝎のごとく嫌悪するのは、生産的でもクレバーでもないのは、おっしゃる通りと存じます。

ただ、冷泉さんの考察に、ひょっとしたら多少抜け落ちているのではないか、と感じる点がありました。それは、安倍首相というよりは、安倍政権の構成員たちが、きわめて恫喝的な手法によって日本政治のカルチャーを貶めたという点です。

安倍政権のもとでは、たとえば、俳句に「平和」という言葉が入っているだけで、「左翼的」「政治的」といちゃもんをつけられて、展覧会から撤去されるようなことが相次ぎました。それは、「安倍チルドレン」として国会議員となった主として文教族の議員たちが、権力をカサに来て、リベラル系の政治カルチャーをいびることをして回ったからです。

(中略)

私は、多くの「アンチ安倍」の人たちが言っていた「アベ政治」とは、この「恫喝体質」のことなのではないかと思っています。自民党支持者の方達にとっては、「単なるメディア戦略」と思われるのかもしれませんが、私は何か違うと感じております。やはり、安倍政権には、各省庁や各業界はもとより、一般人にまで「忖度」を強いるカルチャーが満ち満ちていました。これは、官邸や内閣府に権力が集中するようになった行政改革の結果を、国民がしっかり受け止められなかったから、ということもあるでしょう。

(中略)

たしかに安倍晋三氏からは、権力の腐臭のようなものは、あまりしませんでした。安倍氏と何度も話したことのあるリベラル系の新聞の記者をしている知人も、「直接会うと、安倍さんはとても好人物」「そして、地頭はとてもいい」と言っていました(だったら、そういう記事も書けばいいのに…)。ですから、「善良な少年のまま」の「透明」な人格ゆえに、知的ではなかったが多くのことを成し遂げた首相、という冷泉さんの安倍評価には、「なるほど、そうかもしれない」と思いつつも、「しかし、あの恫喝部隊たちはなんだったのか…」という思いも胸に蟠(わだかま)っているような次第です。

私は、安倍政権の「恫喝体質」を問題にいたしましたが、その根底にある、「国民を“味方”と“敵”に分断して統治する」という手法が、私の最も納得いかないところでありました。この手法は、何も新しいものではなく、カール・シュミットなどが分析対象としているところでもあり、近年の各国の為政者たちの多くが、それなりに取り入れているところだと思います。

ただ、安倍氏には、やはり知性が欠けていたためなのか、これがあまりに剥き出しになってしまったのを感じます。街頭演説の際、自分にヤジを送る人々を指差して「あんな人たちに負けるわけにはいかないんです」と言い放った態度は、一国の宰相として、あまりにも残念なものではなかったでしょうか。そういう態度が積み重なった上での「モリカケ」であり、「桜」であり、「アベノマスク」ですから、一部の少なくない国民は、嫌気が差してしまったのではないかと思います。

安倍氏の非業の死に際しても、国論は(喪に服しつつも)2つに割れたままのように思われます。私は、冷泉さんの「安倍さんは国葬に相応しい」というご意見に共感するものですが、安倍氏が日本国民をこれほどまでに分断してしまったことを思いますと、できるだけ静かに見送らせていただくことも、また已むを得ない気がしてしまいます。

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