浮上した「外国勢力」の資金提供。安倍政権界隈が右派的言動で溢れていた背景

 

冷泉さんからの回答

全くご指摘の通りだと思います。安倍政権周辺の「恫喝体質」に対して、野党は一本調子で「アベ政治を許さない」と応戦する、そしてお互いにその「敵味方の論理」だけが暴走していく、この現象は確かに第二次安倍政権を通じて顕著でした。

非常に厳しい見方をするのであれば、安倍政権の周囲には「知的なものへの劣等感」を抱きつつ、「知的な態度に見える貴族性」に対して感情的に反発し、その延長で「奪取した権力を行使して、知的な人材への懲罰を行う」という行動パターンがあったように思います。

これはファシズムの現象と酷似しており、回り回って国力を大きく毀損しかねないものです。河合栄治郎を身内に持つ私としては、こうした傾向に対しては敏感であり、安倍氏、そして安倍政権に対して無条件の支持はできなかった理由でもあります。

現時点では、2つのことを申し述べたいと思います。1つは、知的なるものへの反発というのが庶民感情だという時代の状況には、どんな構造があるのかということです。反知性的だからという理由で、庶民的なるものを全否定しても、結果は劣等感と被害者の正義が暴走して居直ってくるだけで、戦術として間違っているということも勿論あります。

ですが、そうした表面的なものの真奥に「反知性」という情念のようなものが渦巻いているのは事実であり、安倍政権の周囲はそれを利用(悪用)できてしまったが、左派はその受け止めに失敗したということへの総括は必要だということです。

もっと厳しい見方をするのであれば、日本の歴史や文化の中には、真剣になって探せば、庶民性の真奥に国を富ませ、国を正しい方向に向かわせるような健全な何かはあるはずです。庶民性とは、露悪的なワイドショーでもないし、秀吉の晩年のような迷妄でもなく、また国防婦人会のようなファッショ体質でもないと思います。そうではなくて、自然な正しさというものを、日本という比較的人口が多く、識字率が高く、高度な文明を維持している社会はしっかりその庶民階層の中に持っているのだと思います。

そこに国力の根源があるのであり、そうした庶民性の持つ健全な部分を、どうやって社会改良のエネルギーに転換していくのか、左派は、あるいはリベラルの側は、あるいは改革の側は、今一度そのことを考え直して行かねばなりません。

もう1つは、あまりにも露骨な右派的言動、反知性的言動の背景には、外国勢力の資金提供があったということが、今回の一件で浮上して参りました。中央官庁を不自然な形で辞職して、不自然な形でタレントになったり、政治家になったりという人々の存在は、これまで謎でしたが、その謎を暴いて解体してゆくことがもしかしたら可能になるかもしれません。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2022年7月19日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

image by: retirementbonus / Shutterstock.com

この記事の著者・冷泉彰彦さんのメルマガ

初月無料で読む

 

初月無料購読ですぐ読める! 7月配信済みバックナンバー

※2022年7月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、7月分のメルマガがすべてすぐに届きます。
2022年7月配信分
  • 【Vol.439】冷泉彰彦のプリンストン通信『権力の空白という異常な夏』(7/19)
  • 【Vol.438】冷泉彰彦のプリンストン通信『安倍晋三氏、長期政権のマジックとは?』(7/12)
  • 【Vol.437】冷泉彰彦のプリンストン通信『日本病を考える(その1)』(7/5)

いますぐ初月無料購読!

<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>

初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込880円)。

2022年6月配信分
  • 【Vol.436】冷泉彰彦のプリンストン通信『問題だらけの日米政局を考える』(6/28)
  • 【Vol.435】冷泉彰彦のプリンストン通信『参院選の隠された争点とは?』(6/21)
  • 【Vol.434】冷泉彰彦のプリンストン通信『経済の混乱と米中の政局』(6/14)
  • 【Vol.433】冷泉彰彦のプリンストン通信『外交どころではないバイデン』(6/7)

2022年6月のバックナンバーを購入する

2022年5月配信分
  • 【Vol.432】冷泉彰彦のプリンストン通信『IPEFと中国との共存戦略』(5/31)
  • 【Vol.431】冷泉彰彦のプリンストン通信『QUAD戦略の危険性を問う』(5/24)
  • 【Vol.430】冷泉彰彦のプリンストン通信『米中ロ、3カ国の危機が一気に好転?』(5/17)
  • 【Vol.429】冷泉彰彦のプリンストン通信『アメリカの中絶論争を検証する』(5/10)
  • 【Vol.428】冷泉彰彦のプリンストン通信『岸田政権の改憲路線、大丈夫か?』(5/3)

2022年5月のバックナンバーを購入する

2022年4月配信分
  • 【Vol.427】冷泉彰彦のプリンストン通信『岸田政権のロシア外交』(4/26)
  • Vol.426】冷泉彰彦のプリンストン通信『アメリカのロシア政策、ミスばかりの30年(4/19)
  • 【Vol.425】冷泉彰彦のプリンストン通信『ウクライナ情勢と北方外交』(4/12)
  • 【Vol.424】冷泉彰彦のプリンストン通信『ウクライナ戦争、7つの論点』(4/5)

2022年4月のバックナンバーを購入する

2022年3月配信分
  • 【Vol.423】冷泉彰彦のプリンストン通信『ウクライナと中国のエネルギー政策』(3/29)
  • 【Vol.422】冷泉彰彦のプリンストン通信『ウクライナと中国』(3/22)
  • 【Vol.421】冷泉彰彦のプリンストン通信『危機の中での核管理』(3/15)
  • 【Vol.420】冷泉彰彦のプリンストン通信『ウクライナ戦争とアメリカ』(3/8)
  • 【Vol.419】冷泉彰彦のプリンストン通信『ロシアのウクライナ侵攻』(3/1)

2022年3月のバックナンバーを購入する

2022年2月配信分
  • 【Vol.418】冷泉彰彦のプリンストン通信『新しい資本主義の誤解』(2/22)
  • 【Vol.417】冷泉彰彦のプリンストン通信『ウクライナ問題の構図』(2/15)
  • 【Vol.416】冷泉彰彦のプリンストン通信『揺れるスポティファイ』(2/8)
  • 【Vol.415】冷泉彰彦のプリンストン通信『鉄道車内の治安維持対策』(2/1)

2022年2月のバックナンバーを購入する

2022年1月配信分
  • 【Vol.414】冷泉彰彦のプリンストン通信『ウクライナ危機、想定シナリオ』(1/25)
  • 【Vol.413】冷泉彰彦のプリンストン通信『バイデン政権は危険水域?』(1/18)
  • 【Vol.412】冷泉彰彦のプリンストン通信『在日米軍を考える』(1/11)
  • Vol.411】冷泉彰彦のプリンストン通信『オミクロンとアメリカの政治経済』(1/4)

2022年1月のバックナンバーを購入する

2021年12月配信分
  • 【Vol.410】冷泉彰彦のプリンストン通信『年末特集、ガラガラポン待望論を忘れよ』(12/28)
  • 【Vol.409】冷泉彰彦のプリンストン通信『国境閉鎖とコロナ後への備え』(12/21)
  • 【Vol.408】冷泉彰彦のプリンストン通信『民主主義サミットの限界』(12/14)
  • 【Vol.407】冷泉彰彦のプリンストン通信『日米関係は大丈夫か』(12/7)

2021年12月のバックナンバーを購入する

2021年11月配信分
  • 【Vol.405】冷泉彰彦のプリンストン通信『アメリカの分断疲れ』(11/23)
  • 【Vol.404】冷泉彰彦のプリンストン通信『日本のワクチン戦略』(11/16)
  • 【Vol.403】冷泉彰彦のプリンストン通信『選挙後の日米政局(11/9)
  • 【Vol.402】冷泉彰彦のプリンストン通信『総選挙結果を考える』(11/2)

2021年11月のバックナンバーを購入する

2021年10月配信分
  • 【Vol.401】冷泉彰彦のプリンストン通信『総選挙、3つの疑問点を解く』(10/26)
  • 【Vol.400】冷泉彰彦のプリンストン通信『日本病の原因を探る』(10/19)
  • 【Vol.399】冷泉彰彦のプリンストン通信『岸田演説から経済政策を読み解く』(10/12)
  • 【Vol.398】冷泉彰彦のプリンストン通信『岸田新政権の経済感覚を疑う』(10/5)

2021年10月のバックナンバーを購入する

2021年9月配信分
  • 【Vol.397】冷泉彰彦のプリンストン通信『総裁選直前、各候補を比較する』(9/28)
  • 【Vol.396】冷泉彰彦のプリンストン通信『アベノミクスの功罪』(9/21)
  • 【Vol.395】冷泉彰彦のプリンストン通信『911テロ20周年の追悼』(9/14)
  • 【Vol.392】冷泉彰彦のプリンストン通信『911テロ20周年+政局緊急特集』(9/7)

2021年9月のバックナンバーを購入する

2021年8月配信分
  • 【Vol.393】冷泉彰彦のプリンストン通信『アフガン情勢、現状は最悪のシナリオではない』(8/31)
  • 【Vol.392】冷泉彰彦のプリンストン通信『混乱続くカブール、バイデンは失敗したのか?』(8/24)
  • 【Vol.391】冷泉彰彦のプリンストン通信『カブール陥落と、反テロ戦争の終わり』(8/17)
  • 【Vol.390】冷泉彰彦のプリンストン通信『日本の政局の重苦しさを考える』(8/10)
  • 【Vol.389】冷泉彰彦のプリンストン通信『コロナとアメリカの分断の現在』(8/3)

2021年8月のバックナンバーを購入する

2021年7月配信分
  • 【Vol.388】冷泉彰彦のプリンストン通信 アメリカから見た東京五輪の開会式中継(4つの観点から)(7/27)
  • 【Vol.387】冷泉彰彦のプリンストン通信 東京五輪を直前に控えて、安全と安心の違いを考える(7/20)
  • 【Vol.386】冷泉彰彦のプリンストン通信 日本人差別事件に関する3つの視点
    (7/13)
  • 【Vol.385】冷泉彰彦のプリンストン通信 バイデン政権の弱点は、反ワクチン派と副大統領周辺か?(7/6)

2021年7月のバックナンバーを購入する

2021年6月配信分
  • 【Vol.384】冷泉彰彦のプリンストン通信 バイデン政策と現代資本主義論(政府の役割とその限界)(6/29)
  • 【Vol.383】冷泉彰彦のプリンストン通信 資本主義は修正可能か?(その2、改めて議論を整理する)(6/22)
  • 【Vol.382】冷泉彰彦のプリンストン通信 資本主義は修正可能か?(その1、現代の価格形成トレンド)(6/15)
  • 【Vol.381】冷泉彰彦のプリンストン通信 コロナ・五輪の迷走が示す「お上と庶民」相互不信の歴史(6/8)
  • 【Vol.380】冷泉彰彦のプリンストン通信 ロッキードと現在、政治の不成立(6/1)

2021年6月のバックナンバーを購入する

2021年5月配信分
  • 【Vol.379】冷泉彰彦のプリンストン通信 台湾海峡をめぐる4つの『ねじれ』(5/25)
  • 【Vol.378】冷泉彰彦のプリンストン通信 五輪追加費用、問題はIOCより国内の利害調整では?(5/18)
  • 【Vol.377a】冷泉彰彦のプリンストン通信 五輪の食事会場に『監視員配置して会話禁止』、どう考えても不可能(5/14)
  • 【Vol.377】冷泉彰彦のプリンストン通信 東京五輪をめぐるカネの話を怪談にするな(5/11)
  • 【Vol.376】冷泉彰彦のプリンストン通信 衰退途上国論(5/4)

2021年5月のバックナンバーを購入する

2021年4月配信分
  • 【Vol.375】冷泉彰彦のプリンストン通信(4/27) (緊急提言)コロナ政策、全面転換を主権者に問え!
  • 【Vol.374】冷泉彰彦のプリンストン通信(4/20) 菅=バイデンの「対面首脳会談」をどう評価するか?
  • 【Vol.373】冷泉彰彦のプリンストン通信(4/13) 政治はどうして『説明』ができなくなったのか?
  • 【Vol.372】冷泉彰彦のプリンストン通信(4/6) 主権者が権力を委任しなくなった未来国家ニッポン

2021年4月のバックナンバーを購入する

2021年3月配信分
  • 【Vol.371】冷泉彰彦のプリンストン通信(3/30) オワコンばかり、3月4月のイベントは全面見直しが必要
  • 【Vol.370】冷泉彰彦のプリンストン通信(3/23) 中国の経済社会は、ソフトランディング可能なのか?
  • 【Vol.369】冷泉彰彦のプリンストン通信(3/16) 五輪開催の可否、3つのファクターを考える
  • 【Vol.368】冷泉彰彦のプリンストン通信(3/9) 311から10周年、被災地だけでない傷の深さ
  • 【Vol.367】冷泉彰彦のプリンストン通信(3/2) 日本でどうしてトランプ支持者が増えたのか?

2021年3月のバックナンバーを購入する

冷泉彰彦この著者の記事一覧

東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 冷泉彰彦のプリンストン通信 』

【著者】 冷泉彰彦 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 第1~第4火曜日発行予定

print
いま読まれてます

  • 浮上した「外国勢力」の資金提供。安倍政権界隈が右派的言動で溢れていた背景
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け