月たった3千円。地域の消防団員をいつまでボランティアに頼るのか

 

まず、消防団員はボランティアに頼るのではなく、定年退職者や主婦を含む女性から募ります。報酬は月額15万円程度。一定の能力を備えるため、定期的な訓練と災害時の準常備消防に見合った出動を義務づけます。

そして、可能な部分を機械化します。普通の消防隊員と比べて体力面で劣るのは紛れもない事実ですから、例えば消防車は小型のはしご車の近代化されたもので統一します。小型のはしご車は、ハシゴをたたんでいれば普通の消防車として使えますし、ハシゴを伸ばせば3~5階建ての建物にも使えます。

ハシゴの操作(伸縮、角度調整、回転)と消火ノズルの調整は、ハシゴの先端部分と車体側面にある小さな2本のレバーでできるようにします。この機能は、50メートル級の大型はしご車では標準装備となっているものです。

このような枠組みを示し、消防団員を募っていき、一定規模で地域ごとに組織化していくのです。田舎暮らしを求めて都会から来る人を含めて、地域で暮らす定年退職者や女性にとって、現金収入の面からもメリットがあるはずです。地方創生に組み込んでもらいたいプランでもあります。報酬の面は、まずは提案してみて、応募状況を見ながら改善していくくらいの柔軟性があれば、魅力的なものになると思います。

私が関係している静岡県の消防団員の定員は2950人です。そこに月額15万円を支給すると月に4億4250万円。年間では53億1000万円。機械化の問題を含めても不可能な数字ではありません。まずは各都道府県がモデルを描き、国に提案してみてはどうでしょうか。それを国が制度化し、財政的に補助することになると、具体化していくのは時間の問題のような気がします。

このくらいの「絵」を描くのが戦略的な思考というものです。基礎問題にあたる防災が確立しないと防衛力は機能しないのですが、日本は全体を見据えたグランドデザインを描けず、枝葉の議論ばかりに終始しています。幹を描くことができるようになるまで、文句を言い続けなければならないとは辛いかぎりです。(静岡県立大学特任教授 軍事アナリスト 小川和久)

image by: Shutterstock.com 

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