UUUMは広告、ANYCOLORはコマースが主力
ANYCOLORとUUUMのビジネスモデルの違いを把握するため、それぞれの企業の売上の内訳を見てみましょう。
ここではまずはビジネスモデルが比較的わかりやすいUUUMから見ていきます。UUUMは売上の半分をYouTubeのアドセンス(広告)から得ています。すなわち、UUUM所属のYouTuberが動画を配信して、アクセス数に応じて広告料が支払われるという広告を主体にしたビジネスということです。YouTube経由の広告以外にも、企業からの直接広告としても売上の30%弱を得ています。
それ以外としてグッズ、イベント、音楽等から生み出されるクリエイターの売上はわずか16%です(図表5)。
図表5
他方、ANYCOLORでは、売上の半分近くをコマースから得ています(図表6)。
図表6
ANYCOLORのコマースと言われてもピンとこないかもしれませんが、以下の図表7のようにV tuberに関するグッズやボイスコンテンツ等を制作し、販売しているのです。ヒットアニメのグッズがたくさん売れるように、V tuberのグッズやコンテンツもウェブ上で多く売れているということです(図表7)。
図表7
他にもライブストリーミングで21%もの売上を得ています。ライブストリーミングは、YouTube上でライブ配信することを言います。ANYCOLORにおけるライブストリーミングの収益は、主にSuper Chat、YouTubeメンバーシップ、そしてアドセンス収益の3つから構成されています。
Super ChatとはYouTubeが提供するサービスであり、ユーザーが有料課金を行うことで、チャットに投稿するコメントが目立つようになります。そうなることで、視聴者は、V tuberとのコミュニケーションが取りやすくなるというメリットがあります。
YouTubeメンバーシップとは、特定のチャンネルに月額課金を行う有料会員のサービスのことを言います。最後のアドセンス収益は、UUUMと同じくYouTubeからの広告収入になります。
このように、YouTuberを抱えるUUUMと、V tuberを抱えるANYCOLORはともにYouTubeを主戦場にしているものの、売上の構成はかなり違っていることがわかります。
このことは、YouTubeの番組登録者数からみても興味深いことがわかります。UUUMの取締役であり日本を代表するYouTuberであるHIKAKINの代表的なチャンネルの登録者数は、Hikakin TVで1,080万人、Hikakin Gamesで登録者数は562万人もいます。他にもUUUMの代表的なYouTuberであるはじめしゃちょーは、1,020万人の、フィッシャーズは751万人もいます。再生回数でいうと、Hikikan TVはなんと99億回も再生されています。
これら圧倒的なチャンネル登録者数から再生回数を稼ぎYouTubeのアドセンス収入や企業からのタイアップ広告から稼ぐのがUUUMのビジネスモデルです。
一方で、ANYCOLORで人気のあるV tuberトップ3でみると、トップの壱百満天原サロメで153万人、2位のKuzuha Channelで136万人、そして3位のKanae Channelで105万人です。登録者数ではUUUMのYoutuberよりかなり少ない状況です。さらに再生回数で見ると、ANYCOLORトップはKuzuha Channelの4.9億回です。この数字はたしかにすごいのですが、HIKAKIN TVと比べると1/20程です。
このように登録者数や再生回数ではUUUMがだいぶ先行していますが、ANYCOLORはそもそも再生回数で売上高が決まるアドセンス収入(広告収入)をメインのビジネスとはせず、コマースを主戦場しています。そのため、ANYCOLORは、UUUMよりも高い成長率と利益率を実現でき、結果としてUUUMの8倍の時価総額にもなっているといえます。