ANYCOLORは今後もこの成長を続けられるのか
営業利益率で見ると、UUUMの4%に対して、ANYCOLORは30%と圧倒的に高いことがわかりました。このことがANYCOLORの時価総額がUUUMの8倍にもなっている理由の一つです。
加えて重要な論点は、ANYCOLORが今後も高い成長を実現できるかどうかという点です。一昨年の120%成長、昨年の86%成長と売上高につき、ここ数年高い成長率を誇ってきたANYCOLORですが、UUUMは240~250億円前後の売上高で足踏みをしている状況です。ANYCOLORも早晩売上高の天井が見えてくるのでしょうか。
UUUMとANYCOLORの直近の決算短信によると、来期の売上高と営業利益の予想は図表10のとおりです。
図表10
ANYCOLORは2020年~2021年度と比較するとさすがに成長率は下がっていますが、それでも34~48%とまだ高い成長率が見込まれています。UUUMは15~21%の売上高成長の予想をしていることもあり、売上の絶対額でいうとANYCOLORとUUUMではまだ差がありますが、営業利益の絶対額で見ると、ANYCOLORが圧倒しています。このように、ANYCOLORはUUUMよりも高い成長率と高い利益率を有していることで、株式市場では、ANYCOLORの時価総額はUUUMよりも随分高く評価されていると考えられます。
実際、PERで見ても、ANYCOLORはUUUMよりも40%近く高い評価がされています(図表11)。
図表11
これまで見てきたように、ANYCOLORはV tuberというアニメキャラクターを、UUUMは人気YouTuberを扱う企業として、ともにYouTubeを主戦場としていますが、ビジネスモデルはまるで違い、その結果として利益構造も大きく異なるものとなります。
世間における知名度や認知度でいうとUUUMの方がANYCOLORよりだいぶ高いといえますが、株式市場における存在感でいうとこれまで見てきたようにANYCOLORが圧倒的なのです。では、UUUMは今後どのような戦略で成長を目指していくのでしょうか。最新の決算説明資料では、図表12のことが書かれています。
図表12
ここからも分かる通り、今後UUUMはアドセンスに加えて、グッズやP to C(Person to Consumer)等の事業の拡大を目指しています。この点については、UUUMよりもANYCOLORが大きく先行している分野だといえます。
YouTubeにおいては、かつては広告で儲けるビジネスモデルというイメージでしたが、ANYCOLORはV tuberを用いて、低い原価率と広告宣伝費率を通じたコマース事業を伸ばすことで、事業を大きく伸ばしていきましたし、UUUMも同様の方向に舵を切ろうとしています。
現在ANYCOLORとUUUMはYouTubeの市場で最も存在感が大きい企業です。この2社の動向を押さえることが、今後のYouTube、動画、そしてエンタメ市場の行方を占う上でも極めて重要です。是非注目してみてください。
image by: Shutterstock.com