打ち砕かれたプーチンの野望。ロシアの軍事的完封に成功した欧米

2022.08.05
 

欧米が、ロシアによるウクライナ領土の支配のままウクライナ戦争の停戦を認めてしまった場合、日本は難しい立場に陥る。「新冷戦」の前線に位置する日本は、侵略を試みる国が、「屁理屈」を弄して侵略を「正当化」する余地を、絶対に与えてはならないからだ。

例えばロシアは、「ウクライナ国内のネオナチ勢力がロシア系住民を虐殺している」と主張し、「ロシア系住民を救うためであり、侵略ではない」と軍事侵攻の「正当性」を訴えてきた。

それに日本が少しでも理解を示し、中途半端に「力による一方的な現状変更」を認めることになったらどうなるのか。日本を狙う国々が、さまざまな屁理屈を弄して日本への侵攻を決断する契機を与えることになるかもしれないのだ。

つまり、ロシアによる「力による一方的な現状変更」を絶対に認めないことは、単にウクライナ紛争に対する日本の立場を示すこと以上の意味がある。それが、日本の領土を侵し、国民の命を奪うことは絶対に認めないという姿勢を示す「安全保障政策」そのものとなっている。

繰り返すが、これから冬に向けて起こることは、欧米という勝者による、ロシアの「力による一方的な現状変更」を事実上認めた形で戦争を終結させようとする動きだ。一方、日本はウクライナ戦争の勝者ではない。日本の勢力圏が拡大したわけではない。これから領土を脅かされる懸念がある国だ。

最も強く認識すべきことは、日本は一見穏健そうな国のイメージとは違い、ウクライナの徹底抗戦と領土の回復を、米英独仏伊など、どの国よりも最も強く支持する「最強硬派」でなければならない立場だということだ。日本の置かれた厳しい現実を、日本国民がどこまで理解しているのかが問題だ。

image by: Stcc / Shutterstock.com

上久保誠人

プロフィール:上久保誠人(かみくぼ・まさと)立命館大学政策科学部教授。1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。主な業績は、『逆説の地政学』(晃洋書房)。

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