打ち砕かれたプーチンの野望。ロシアの軍事的完封に成功した欧米

2022.08.05
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2月24日の侵攻開始以来5ヶ月以上に渡り、ウクライナで侵略行為を続けるプーチン大統領。西側諸国はロシアに対して厳しい経済制裁を科していますが、エネルギー問題などで揺さぶりをかけられているEU各国が早期停戦を望んでいるとの声も聞かれます。しかし、欧州が停戦を急ぐのはエネルギー供給不安が原因ではない、とするのは立命館大学政策科学部教授で政治学者の上久保誠人さん。上久保さんは今回、EU各国に戦争を継続する意義がなくなった理由と、ウクライナの徹底抗戦と領土の回復について、日本がもっとも強く支持すべき訳を解説しています。

プロフィール:上久保誠人(かみくぼ・まさと)
立命館大学政策科学部教授。1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。主な業績は、『逆説の地政学』(晃洋書房)。

NATO拡大の完成により、ロシアは既に負けた

ロシアがウクライナに軍事侵攻してから5か月が経った。ロシアが、東部ドンバス地域ルガンスク州、ドネツク州の完全掌握を目指して攻勢を強めている。また、東部2州にとどまらず、南部など周辺地域の掌握も視野に入れることを表明した。さらに、東部の占領地域併合の正当化のために「住民投票」を実施する動きを本格化させるとも発表している。

ロシアは、欧米の経済制裁に対抗し、外交でも攻勢を強めている。ロシアは、中国、インド、ブラジル、南アフリカとともに新興5か国(BRICS)首脳会談を開催した。会議では、習近平中国国家主席が米欧主導の経済制裁に同調しないことをあらためて示した。

また、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、イランのイブラーヒーム・ライーシー大統領、トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領の3首脳はイラン・テヘランで「第7回アスタナ和平プロセスサミット」を開催した。

シリアの最近の状況やテロ対策強化について意見交換を行うことが目的だったが、トルコが「いかなる口実の下でも東ユーフラテス地域に米軍が存在することは正当化できず、その地域から撤退すべき」と主張するなど、米国への批判を強める会談となった。

ロシアは、BRICSや中東など、欧米が弱い多国間枠組みを活用し、その背景にいる対ロ制裁に慎重な中東やアジア、南米などの国々への影響力を強化することで、欧米に対抗する思惑があると考えられる。

一方、ロシアのウクライナ軍事侵攻が始まって以降、ロシアからの石油・ガスパイプラインに依存していない米英を中心に、欧米諸国は一枚岩となってロシアに経済制裁を科してきた。例えば、欧州連合(EU)は、ロシアからの石油の輸入を年内に92%減らすほか、ロシア銀行最大手のズベルバンクを国際的な資金決済網「国際銀行間通信協会(SWIFT)」から排除することを決めている。

その欧米諸国の間に、不協和音が生じている。ロシアが、欧州へのエネルギー供給を大幅に削減したからだ。例えば、ロシア国営エネルギー会社ガスプロムが、ドイツにつながる「ノルドストリーム1」パイプラインの流量を半分に減らし、輸送能力のわずか20%にすると発表した。そのため、今冬に欧州で深刻な天然ガス不足を引き起こす懸念が出て、欧米諸国に動揺が走っているのだ。

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