7月30日に放映されたTBS「報道特集」で、興味深い証言をした米統一教会元幹部がいる。アレン・ウッド氏だ。
1970年に日本武道館でおこなわれた統一教会と国際勝共連合のイベントで、司会をウッド氏が務めていた。笹川氏のスピーチをこう振り返る。
「彼(笹川)は胸をたたきながら『私は文(鮮明)氏の犬だ』と言いました。驚くべき発言でした。日本で最強の人物が自分を文氏の下に位置づけたのです。あの時、『我々は世界を支配できる』と思いました」
この証言を聞いて思い浮かんだのが、安倍元首相による「UPF」イベント(2021
年9月12日)へのビデオメッセージだ。
「盟友のトランプ大統領とともに演説する機会を頂いたことを、光栄に思います」
「今日に至るまでUPFと共に世界各地の紛争の解決、とりわけ朝鮮半島の平和的統一に向けて努力されてきた韓鶴子総裁ら、皆様に敬意を表します」
統一教会がどこの紛争の解決に努力したのか知らないが、大仰に教会を持ち上げる安倍氏の姿勢は笹川氏とダブって見える。
UPFの梶栗正義会長が信者向けに配信した映像も「報道特集」で放映された。安倍氏からビデオメッセージの約束をとりつけるまでの交渉経過を明かしている。
「先生、もしトランプがやるということになったら、やっていただかなくちゃいけないけどどうかと。“ああ、それなら自分も出なくちゃいけない”という話を実は2021年の春にやりとりをしてたんですよ。先方から『やりましょう』という答えが返ってきて私の耳に入ったのが、8月24日。この8年弱の政権下にあって、6度の国政選挙において私たちが示した誠意というものも、ちゃんと本人が記憶していた」
UPF側のビデオ出演要請に対し、当初渋っていた安倍氏は、トランプ米大統領の出演決定を聞いて態度を変えた。それは、安倍政権下での全ての国政選挙で統一教会が協力してきたことをちゃんと記憶していてくれたからだ、と梶栗氏は言っているのだ。
教会員の力で総理大臣をも動かせることへの自負がにじむ発言である。しかしそれは、日本の政権がいかに甘く見られてきたかという証左でもある。それなのに、いまだ自民党から統一教会との関係を解消する動きはほとんど出ていない。
安倍元首相の実弟、岸信夫防衛相は「統一教会とはお付き合いもありましたし、選挙の際もお手伝いをしていただいております」と述べ、問題はないとの認識を示していたが、厳しい批判の声を受けてようやく「関係を見直す」と姿勢を転じた。本気かどうかは甚だ疑わしい。
岸田首相は「社会的に問題になっている団体との関係については、丁寧な説明を行っていくことは大事であると思います」と、相も変わらず他所事のようなコメントである。こういう時こそ、決別宣言をするなり、強いリーダーシップを示すべきではないだろうか。
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