挑発的な中国の72時間軍事演習によって「不沈空母=台湾」の認識が消えた

 

「第4次台湾海峡危機」とも呼ばれる中国の今回の武力挑発に、台湾が受けた衝撃は相当なものだ。中国が台湾本島に爆弾を一発落とさずに周辺海上で武力デモを行うだけでも、事実上台湾の国家機能を麻痺させる可能性があるという事実が明らかになったためだ。

かつて台湾島は「不沈空母」と考えられていた。海と険しい山で保護される台湾特有の地形で、中国軍の上陸は事実上自殺行為と見なされていた。1949年に国共内戦で敗退した蒋介石・蒋経国前総統父子が台湾島を逃避先に選び後日を誓った理由もこのような理由からだ。

しかし、中国のミサイルと海・空軍戦力の飛躍的強化は「台湾=不沈空母」という従来の認識を根こそぎ崩している。「不沈空母」もやはり海上補給船が途切れれば無用の長物に過ぎないという事実が明らかになったためだ。3隻の空母戦力まで確保した中国海軍は、台湾南部に作戦区域を設定し、台湾本島とフィリピンのルソン島の間のバシ海峡まで事実上遮断した。

バシ海峡は北東アジアと東南アジアを最短距離で結ぶ台湾海峡が封鎖される場合、迂回航路の役割を果たさなければならない。中国海軍の太平洋進出の第1関門である「第1島連線」の一部でもある。ところが、中国海軍のバシ海峡封鎖で有事の際、米海軍の支援を受けることもままならないという事実が明らかになったわけだ。「島連線」とは、太平洋の島を鎖のように繋ぐ仮想の線で、中国海軍の作戦半径を意味するもの。

さらに、中国軍が今回「航行禁止区域」に設定した6か所の作戦区域のうち、3か所は台湾の12海里(22キロ)領海線と重なるように設定された。台北北部海上の作戦区域は12海里領海線に半分ほどかかっており、北部の知龍港一帯の作戦区域は10海里、南部の高雄港近くの作戦区域は9海里の外側に設定された。「第3次台湾海峡危機」の時は、中国軍は台湾本島12海里の内側に作戦区域を設定できなかった。台湾を国際法上、12海里の領海を持つ別の国家とは認めないという確実なシグナルを送ったわけだ。

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